「やりたいと思った心に従って動いてほしい」アトランタ・ホークス在籍3季目のダンサー、大西真菜美が後進に伝えたいもの(後編)
チアで生計を立てられるレールを敷きたい
NBAアトランタ・ホークスで3シーズン目を迎えるダンサーの大西真菜美。後編では間近に控えた母校・箕面自由学園チアリーディング部との『共演』に懸ける思いや、アメリカでチアリーダー、ダンサーを目指す後進のため、収入面などの道筋を示すための取り組みを語ってもらった。(前編はこちら) ――昨年から『NBA Dancer Manami in Atlanta』というYouTubeチャンネルを開設されました。きっかけは何だったんですか? 自分自身のチャレンジで誰かを勇気づけたり、繋がりが広がったりすればいいなと思って始めました。私も今の瞬間瞬間を忘れたくないので発信しています。 ――日本からの相談が増えたり、新たな出会いが生まれたりしましたか? 科学、芸術、教育、ビジネス、スポーツの分野で卓越した能力を持つ人に発給される「O-1ビザ」について発信したところ、違うスポーツの方から連絡をいただくなど、様々な競技で海外挑戦を目指している方々と縁ができました。シーズンを終えて日本に帰国するとNBAダンサーとして学んだダンススタイルをお伝えするダンスのワークショップを開いていますが、海外を目指している方や、新たな動きや雰囲気のダンスを取り入れたい方などが集まってくれて、とても活気のある内容になっています。 ――2月25日には母校の箕面自由学園チアリーディング部「GOLDEN BEARS」がホークスホームゲームのハーフタイムショーに参加するそうですね。 私は、今までのご縁とご縁を合わせて、常に「何か楽しいことをしたい」と考えています。今回はホークスと箕面自由学園を掛け合わせたいと思い立って、ハーフタイムショーに高校生たちが出演できないかと企画しました。日本の高校生がNBAのハーフタイムショーに出るのは初めてだと思います。今後、アメリカに行きたいと考えている後輩たちも数多くいると思うのでそのサポートをしたいし、他のアスリートやパフォーマーのモデルケースになればいいと思っています。 ――突っ込んだ質問になりますが、NBAダンサーとして生計を立てられるのですか? NBAダンサーはパートタイムというポジションで、「他に仕事を持ちながらこの仕事に就いてください」というコントラクト(契約)に署名します。これはNFLも同様で、NBA、NFLのほぼすべてのチームで「絶対この仕事だけで生活をしようとしないでください」と決められているそうです。私も日本企業の正社員としてリモートワークをしながらNBAのダンサーをしています。アメリカで正社員として働くのはかなり難しいですし、NBAのダンサーとして使える時間も限られてしまうので、このようなスタイルはおすすめですね。ただアメリカの物価は高いので、お給料を日本円でもらうと、正社員なのにパートタイムで働いている人たちとほぼ変わらない時給になるのが現状です。 ーー華やかさの裏に、シビアな現実があるんですね。 ネガティブな言い方をすれば、「なぜここまでして今があるんだろう」とは思います。身を注いで没頭して、それで、お金に困る人生には疑問が生じます。裕福な暮らしができているダンサーは限られます。日本のチアリーダーも交通費しかもらえていない話もあります。「好きなことをやっているからお金にならなくてもいい」という考え方では、チャレンジしたい人が減っていくと思います。合格後も様々なベネフィットがあるという仕組みにしないと、憧れの存在になれず、後輩たちが誰もついてこないようになってしまいます。生計を立てられるようにレールを敷きたいです。