ドラマ『コールミー・バイ・ノーネーム』ロケ地にインスパイアされたストーリーに注目!/脚本家・松ケ迫美貴インタビュー
―紆余曲折を経て脚本家デビューを果たした松ケ迫さん。今回のドラマ『コールミー・バイ・ノーネーム』は小説が基になっていますが、原作を読んだ時の感想を教えてください。 松ケ迫「原作はとても面白かったのですが、これを映像化するのはかなり難しいなと率直に思いました。ただ、愛と琴葉の人柄にすごく好感が持てて。どちらも過去に影を落とすトラウマを抱えているけれど、逃げることなく過去に決着をつけて今に至っているんですよ。その“人間的強さ”に惹かれました。2人が出会ったことでもう1回その過去を掘り返すのが今回の話ですが、主人公たちが生きる力強さを原作から読み取ったので、そういった彼女たちのキャラクターを生かした話にできれば素敵だなと思いながら読んでいました。」 ―実際に執筆してみていかがでしたか? 松ケ迫「やっぱり難しかったです(笑)。オリジナル脚本とは違い予めストーリーがあるのでどうしようと思って。原作者の方がいらっしゃる作品の脚本を書くというのは本当に責任重大だと感じました。まずは原作に忠実な初稿を起こし、それを枝監督やプロデューサーの方々と一緒に映像化するにあたってどう変えていこうか話し合いました。私が“原作のこの部分は大事だな”と感じていてもそれぞれ解釈は違うかもしれない。作り手が皆同じ方向を向き、変更点の意図を原作者の方に説明できるような形で握り合うのがベストなのでじっくり話し合って進めました。」
脚本にも影響を与えたロケ地
―苦心しながら生み出された本作ですが、こだわった点や工夫した点などはありますか? 松ケ迫「このドラマは愛と琴葉が追いかけたり追いかけられたり、くっついたり離れたりという絶妙な距離感のまま8話まで続きます。そんな2人の心の動きを身体的な描写になぞらえて伝わりやすくするように意識はしました。あと、枝監督やプロデューサーの方々が「ドラマの手法にこだわらず、時に映画の間合いで撮ってみたい」と仰っていて。説明を省き印象的なシーンで視聴者に投げかけるような映像にしたいという意向があったので、なるべく台詞も語りすぎないように割と余韻を残すように意識しています。」 ―なるほど。本作のロケーションについてもぜひ教えていただきたいのですが、ロケ地が脚本に影響されることはあるのでしょうか。 松ケ迫「ドラマ内に出てくる大学や水族館、海などは制作の方がロケハンに行った写真を見せていただき、シーンに合わせてト書きも変えるなど調整しました。ゴミ捨て場は私が脚本を書いている段階ではどこでどういう画にするかという場所は決まってなくて。ただ制作の方が「ゴミ捨て場はシーンの中でも多用しますし、特に大切なカットが多くなると思うので作り込みます!」と言っていたので、「じゃあ、大事なシーンはゴミ捨て場にしますね!」と臆せずト書きにたくさん入れました(笑)」