子どもの未来を救う 11月に神戸で全国大会
記事のポイント①日本の子どもの9人に1人が相対的貧困にある②経済的に厳しい子どもに無料で教えるのが学習支援だ③運営の課題を考える全国大会が11月、神戸で開かれる
日本の子どもの9人に1人、ひとり親家庭では2人に1人が相対的貧困にある。経済的理由などで塾に行けない子どもに無料で勉強を教えるのが学習支援団体(無料塾)だ。教育格差をなくし、子どもの未来を救うことにつながる大事な取り組みだ。11月9日に神戸市で開かれる「学習支援シンポジウム全国大会」の事務局、青井介(あおい・たすく)さんに、子どもの学習支援の現状や課題を聞いた。(聞き手=オルタナ編集委員・竹中 司)
■貧困を背景に学習支援団体へのニーズは大きい
――学習支援団体とは、どういったものでしょうか。 家庭の経済事情などで十分な学習機会を得られない子どもたちに、無料で勉強を教えるのが学習支援団体です。無料塾とも呼んだりします。自治体が実施したりNPOや社会福祉法人が運営したり形態は多様です。明確な定義はなくて、全国の団体数などは把握できませんが、確実に増えているという実感はあります。 背景には子どもを取り巻く経済的な厳しさがあるのです。 厚生労働省の調査では、子どもの相対的貧困率は2021年に11.5%、ひとり親世帯では44.5%にのぼっています。「学習支援がなければ高校受験に挑めていなかった。本当にありがとうございます」という声をいただくこともあります。支援団体へのニーズは大きくなっています。 ――どういった子どもが通ってくるのでしょうか。 本当にさまざまです。生活保護が必要なのに受給していない家庭のお子さん。ひとり親で経済的に厳しい家庭。逆に一般的には貧しいとは見られない年収500~600万円の家庭のお子さんもいます。子どもが3人いれば、全員を塾に通わせる余裕はないからです。発達障がいだったり不登校だったりして、学校に行けない、なじめない子どももいます。年齢もいろいろですが神戸市では、未就学児から小・中学生が中心です。
■学習支援団体の課題は財源の確保や運営ノウハウの共有
――なぜ神戸市で学習支援団体の全国大会を開くのでしょうか。 神戸市は団体の活動が盛んなのです。大会の主催者である「神戸学習支援協議会」には17団体が加入しています。このほかにも神戸市のまとめによると、子ども食堂で宿題を見るなど広い意味での学習支援の場は120以上もあるのです。 全国大会は元々、関東で9回開かれていました。「神戸学習支援協議会」として、一度ぜひ地元で開きたいと名乗りを上げました。 ――大会で話し合うことは。 学習支援団体の課題の解決の道を探ることです。 課題は大きく2つあります。 1つめは財源です。主にボランティア講師への謝礼です。 子どもたちを教えるボランティア講師は、大学生や定年退職後のシニア層が中心です。1日に1000~2000円の謝礼をお支払いします。1人の講師が2人の子どもを見るのが標準的です。子ども1人ひとりに寄り添って信頼関係を築くために少人数制が必要なのです。 1団体に20~40人の子どもがいるとして、講師への1日あたりの謝礼が計2万円ほど。週に1回の開催でも月に8万円、年間では約100万円になります。 財源は、自治体の助成金など公的なお金を申請して獲得するか、個人や企業から寄付を集めるか、どちらかになりますが、どちらも一長一短があるのです。 公的なお金は受け入れる子どもの条件など、どうしても制約があります。すると制約から外れた子どもの受け入れは難しくなってしまうのです。一方で個人や企業の寄付は制約は少ないのですが、集めるにはエネルギーが必要ですし難しい。大会では、この課題について考えます。 もう1つの課題は運営ノウハウの共有、例えば子どもと講師のマッチングです。 しゃべってばかりいる子どもには、年配の講師をつけた方がいい場合があります。子どもが少し緊張して勉強に向き合う姿勢ができるからです。女の子には女性の講師をつけたほうがいい。 保護者との関係を築いて「きょうの講師について、お子さんはどう話していましたか」と聞くことも大事です。合わないなら、別の講師にお願いします。マッチングがちゃんとできないと、子どもも講師も継続率が下がります。大会は、こうした知恵やノウハウを他の団体と情報交換する場でもあります。