『虎に翼』が描く安田講堂事件を解説 寅子らに問われる家庭裁判所の“存在意義”
寅子(伊藤沙莉)が再び向き合う美佐江(片岡凜)の“殺人の問い”
このような一連の事件の背景にあるのは、簡単に言ってしまえば学生たちの“権力に対する不満”である。第116話でも未成年の犯罪にじっくりと向き合う寅子の姿が描かれていたが、安田講堂事件で逮捕された薫の人生に寄り添って、正しい道筋を示してくれるのではないだろうか。この事件から学べることがあるとすれば、「暴力では権力を正しく変えることはできない」ということ。建設的な議論を重ねていくことの重要性を痛感するばかりだ。 さて、気になるのは東大進学後に一切描かれていない美佐江(片岡凜)の行方である。すでに30代を超えていることを考えると安田講堂事件に当事者として関わっている可能性は少ないが、第117話では少年法と尊属殺人の問題が浮かび上がってきた。寅子がかつての美佐江からの問いに再び向き合うのではないだろうか。 家庭裁判所が扱う範囲は幅広い。若者の悩みや苦しみに寄り添い、正しく生きるために更正させる家裁の役割は現代においても非常に重要である。家裁の存在意義を改めて考えさせられるエピソードだ。 参考 ※『安田講堂1968-1969』(中公新書) ※『昭和史戦後篇』(平凡社ライブラリー)
川崎龍也