買い取った古民家を改修して店舗として貸し出す。栃木のセレクトショップが始めた試み
コロカルニュース
■地域に眠る物件に命を吹き込む 栃木県を中心に店を構える、古家具と生活雑貨のセレクトショップ〈pejite〉と〈仁平古家具店〉。そのオーナーである仁平透さんが、2024年6月から新たな事業を開始しました。その名も、〈place〉。栃木県内の古民家を始めとした古い建物を、店として使えるように改修して貸し出す事業です。 【写真で見る】母屋の中の様子。柱や梁がぐっと空間を引き締めている。 最初に募集するのは、栃木県鹿沼市の、とある山のふもとにある古民家。明治14年に建てられたもので、母屋と石蔵からなります。 木々に囲まれた母屋は、約1年かけて改修工事を実施。屋根の張り替えや壁の塗り替えなども行って、ふたつの部屋をつくりました。広さはどちらも12坪ほどです。 母屋に入ると目を引くのは、柱や梁。長くこの建物を支えてきたものだけあって、存在感があります。壁には石膏ボードを貼って、入居者が自由に手を加えられる仕様に。入居者の好みに合わせて、土壁や漆喰、モルタルなどを塗ってもいいそうです。 石蔵は、鹿沼市内で採集できる「深岩石」でできているもの。深岩石の壁ならではのあたたかみや質感を残しつつ、6坪の空間に仕上げています。 「石蔵は今でも田舎に行けば点在はしていますが、今からつくられることはきっとありません。今後はもっと貴重なものになっていくと思います」と仁平さん。歴史ある蔵の雰囲気を生かして、絵画やアンティーク、茶器などを並べるのもいいかもしれません。 どちらの建物も、入居者の業種は不問。ひとりで1スペース借りるのはもちろん、「母屋も石蔵も両方借ります!」なんて方法も可能です。入居者のアイデア次第で、無限の広がりを見せる空間なのではないでしょうか。 ■阿吽の呼吸で、使いやすい物件に改修 実は仁平さんが鹿沼市の物件を見つけたのは、偶然のことでした。仁平さんはもともと、大の物件サイト好き。寝る前には必ずといっていいほど物件サイトにアクセスして、新着物件をチェックしているそうです。 今回募集をしている鹿沼市の物件も、同じ経緯で見つけたもの。かなり年季の入った建物ではありましたが、周囲を自然に囲まれた気持ちのいいロケーションや、地元の石材の魅力を感じられる石蔵に強く惹かれ、購入を決めたといいます。古いぶん、建物の費用もかなり安価で、改修費用をかける価値はあると感じたそうです。 物件改修のプランは仁平さんが考え、工事は地元の大工や左官屋さんに依頼しています。依頼先は、普段から〈pejite〉〈仁平古家具店〉といった店舗や、仁平さんの自宅の工事を依頼している人々ばかり。その建物が持つ特徴や雰囲気を残しながら、物件として使いやすい空間をつくるのはお手のものです。 そんな信頼関係のもとで改修された古民家は、古き良き魅力と使い勝手の良さを同時に感じられます。〈pejite〉や〈仁平古家具店〉の店舗に行ったことのある方は、建物の様子もなんとなくイメージできるのではないでしょうか。 ■地域活性化を見据えて 仁平さんが〈place〉を始めた背景には、「地域活性化を目指したい」という考えもありました。 〈place〉で扱うのは、一度は役目を終えた建物ばかり。そうした建物を買い取って改修することで、全国的な空き家問題を解決できたら。そして改修した建物にお店が入居することで、地域に新たな賑わいが生まれたら……そんな思いから、スタートしたのです。 さらに、新しい事業を始めたいけれど、建物をどう手に入れるか悩んでいる方の手助けにもなれればという願いも込められています。 「〈place〉は今のところ、自社のお金で進めている事業です。でも今回の鹿沼市の物件をモデルケースとしていい場所がつくれれば、行政などからの依頼も受けられると考えています」と仁平さん。この事業から、新たな魅力ある空間が生まれてくる日が楽しみです。 今後も栃木県を中心に、関東エリアでの物件の購入や改修を進める予定とのこと。物件に興味のある方は、〈place〉のInstagramから問い合わせてみてください。 information place Instagram:@place______ writer profile Hiroko Shimokawa シモカワヒロコ しもかわ・ひろこ●岐阜県岐阜市出身。タウン誌の編集者を経て、現在は名古屋を拠点に活動するフリーランスライター・編集者。幼少期から「ローカル」を感じる店や人が好きで、大学ではまちづくり・都市政策を研究していた。 【コロカルニュース】とは? 全国各地の時事ネタから面白情報まで。コロカルならではの切り口でお届けする速報ニュースです。