1990年代、クルマの“珍”技術3選
(3)三菱「ディアマンテ」(2代目):プレビューディスタンスコントロール
いまでこそ、アダプティブクルーズコントロールは、ついていないクルマのほうが珍しくなった。自動車ジャーナリストもみな愛用しているけれど、試乗車でこれを使うと、エンジンを含めたドライブトレインのフィールが把握しにくくなるというデメリットもある。 先行車追従型のアダプティブクルーズコントロールは、2000年代に入ってドイツ車から広まっていったように記憶している。高機能のものは、地図データと連動してカーブ手前などで減速したりしてくれる。欧米の環境のほうがこの点では一歩先んじているのも事実。 ただ、三菱自動車は昔からがんばっていた。1995年発売の4ドアセダン、2代目ディアマンテにプレビューディスタンスコントロールの名称で、CCDカメラを使った先行車追従型のクルーズコントロールを搭載していたのだ。 追突を避けるため、エンジンブレーキやダウンシフティングをおこなう。このときディアマンテに搭載されていた変速機は、状況に応じてギヤを自動選択する最適制御と運転スタイルによる学習制御をセリングポイントにした「INVECS-IIスポーツモード付きの4速オートマチック」。自動化は当時すでに三菱のエンジニアの目標だったのだろう。 プレビューディスタンスコントロールでは、高速だけでなく、一般道でも先行車との距離を保つため減速するし、近づきすぎると警告音が鳴った。ただし自動ブレーキはない。 あいにく、せっかくの技術だが、2000年代に入ると、三菱自の経営状態は大きく揺らぐことになった。原因は、2000年のふそうトラックのリコール隠し。そのあと、ダイムラークライスラー(当時)が提携解消を申し入れてくるなど、さらに状況は悪化した。せっかく気合いの入ったセダンを作ったものの、売れ行きは落ち、技術も継続的発展を見ることなく、一時的に頓挫してしまった。 三菱の最新のラインナップは、トヨタなどと較べると、ごく小さい。いまも思うように開発資金が使えないのかもしれない。けれど乗ればいいクルマが揃っている。がんばってほしいなぁ、と、思うのだ。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)