今宮のファインプレーを体感する時代に!? スポーツメディアの今と未来は 学生たちからアイデア続々【第2期OTTO!学生スポーツゼミ⑧】
OTTO!が後押す取材先
ゼミの後半では池田編集長が、昨春スポーツ紙「西日本スポーツ」を休刊し、新たにスタートしたデジタルスポーツメディア「西スポWEB OTTO!」について紹介した。強調したのが、選手やチームだけでなく、それらを支える人たちにもスポットライトを当てようとしている点。「今まではグラウンドやピッチの中のことを書くのがスポーツメディアだった。ただ、そのスポーツビジネスがどういうふうにして成立しているのかを広く皆さんにお知らせして、そういう仕事をしたい、スポーツに関わりたいという人たちを後押しして、スポーツや地域の振興、発展に貢献したい」と語り、昨年開講した学生スポーツゼミもその一環で取り組んでいる点を伝えた。 ゼミでは学生がスポーツ競技や関連イベントの現場へ取材に行き、記事を書く機会も設けている。その好例として池田編集長は、7月下旬に福岡県内で開かれた世界少年野球大会について、開催を提唱しているソフトバンクの王貞治会長に学生を取材した際の話を取り上げた。学生は囲み取材で、王会長とともに大会を提唱し、2021年に亡くなった米大リーグ通算755本塁打の故ハンク・アーロン氏について、遺志をどうつないでいきたいか質問。王会長の回答はOTTO!や西日本新聞で取り上げられた。池田編集長は「王会長の関係者から連絡があり『一番聞いてほしいことを聞いてくれた』と喜んでいた。僕らはプロの目線も持っていなければいけないけど、素人の目線も忘れてはいけないという意味で大事だった」と語った。
未来はICチップ搭載!?
4班に分かれたグループワークでは、未来のスポーツメディアの在り方やジャーナリストの将来像などについて想像を膨らませ、話し合った。 このうち2班からは「人の体にICチップを埋め込み、直接情報が受け取られるデバイスが生まれるのでは」と予測。視覚に訴えかけた情報発信についてのアイデアも多く、プロ野球でホームランの軌道が球場でも見える仕組みや「(ソフトバンクの)今宮選手がファインプレーをするときにどんな目線だったか」「山川選手がホームランを打つときにどう見ているのか」といった、プレー時の目線を体感できる映像サービスを提供するアイデアも出た。 また、バスケットボール、りそなBリーグの試合を観戦した学生からは「タイムアウトで時間が止まったタイミングにチアの人たちが『こういうスタジアムグルメをここで売っている』と宣伝していた。それが一つの番組だなと思い、その番組の枠を買い取って、試合会場の記者がリアルタイムで情報提供をできたらいい」という意見も出た。さらに人工知能(AI)が記事を書く時代の本格的な到来も予測。「今の記者たちは情報を精査して記事を書くと思うけど、AIが先に記事を書き、それが本当に合っているかを精査しに聞きに行く、記事を書くプロセスが変わる可能性がある」と想像を膨らませた。 市川教授は「ドラフト会議では選手の指名はオンライン化されてきているけど、くじ引きは紙で変わらない。あれがないとドラフトと分かりにくくなるから。何を残して何を進化させていくか、伝え方をどう変えていくかがスポーツジャーナリズムの面白さだと思う」とまとめた。
西日本新聞社