子どもの心の支えるオーケストラ コートジボワール
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【6月15日 AFP】子どもたちのおしゃべりでにぎわう中、レイラさん(9)は、コートジボワール初のオーケストラのリハーサルを前に、バイオリンの調弦を手際よく行っている。 レイラさんは、北部の町オディエンヌ(Odienne)を拠点とし、140人近い子どもたちが所属する交響楽団の一員だ。 オーケストラとして集まるのは週に1回だが、普段の練習は毎日行われる。6~16歳の子どもたちが小型のバスで練習拠点のホテルに向かい、伝統的な楽器のバラフォン(木琴の一種)やジャンベなどを2時間以上演奏する。 「オーケストラが私の人生を変えた。だからプロの音楽家になりたい」とレイラさんは話す。 コートジボワール最大の都市アビジャン(Abidjan)から数百キロ離れたオディエンヌは農業に大きく依存していて、労働者の中には児童も含まれる。貧困と高い失業率は、コートジボワールの若者の将来に影を落としている。 オディエンヌの交響楽団はこうした地域において「一風変わったプロジェクト」だと、指揮者のファブリス・コフィ氏は話す。 ■自信を取り戻す 楽団でトロンボーンを担当しているシャカさん(15)は、夜明けから市場で母親を手伝っている。それでも「オーケストラで演奏した音楽を歌ったら、疲れを忘れて、やる気が出る」と話す。 「小さな頃からミュージシャンになることが夢だった。今、夢がかなっているんだ」 ■音楽の理論 オディエンヌでの取り組みは、ベネズエラ発の音楽教育プログラム「エル・システマ(El Sistema)」をヒントにしている。楽団は、コートジボワールのアダマ・カマラ(Adama Kamara)雇用・社会保障相が個人的に資金を提供して設立された。 最初のリハーサルから子どもたちを見守ってきた指揮者のコフィ氏は「伝統的なオーケストラとは正反対のことをやっている」と話す。 通常、交響楽団は「最高の音楽家が集まる場」だが、このオーケストラは、子どもたちに音楽の理論や演奏方法の基礎を教える拠点だ。また、集団指導を行っていて、プライベートレッスンに重きを置く一般的な音楽学校とも異なるという。 「一方で、音楽は子どもたちの学力を向上させることもある」とコフィ氏は付け加える。 楽団に所属する子どもの一人は、実際に学校での成績が上がったといい、獣医師になることが夢だという。楽団でビオラを教える指導者は、このオーケストラが出している成果に驚きを隠せない。 「起きていることは魔法だ」と、ビオラ指導者は話した。 映像は5月に撮影。(c)AFPBB News