職人大、若手も受け入れ 金沢市が方針 入門講座や市外からも
●将来の担い手不足に対応 大工や石工など職人の技術伝承と人材育成に取り組む金沢職人大学校は、将来の担い手不足に対応するため、来年度から研修生の受け入れ対象を拡大する。現在は中堅職人を対象にしているが、今後は若手向けの入門講座を開設し、市外からの研修生も受け入れる。文化財の修復事業の広域展開にも取り組み、藩政期から受け継がれてきた技を次代につなげる。 28日の機能強化計画策定委員会の初会合で、市側が基本方針を示した。 職人大学校では、石工、左官、瓦、畳、建具など9科目の「本科」と、文化財修復に焦点を当てた「修復専攻科」が設けられている。研修生は3年間にわたり、学識経験者や技術保持者から知識や技術を学ぶ。1996年の開校後、延べ740人が修了した。 会合で市側が示した機能強化案には、研修対象者の拡大を盛り込んだ。これまでは30~50歳程度の中堅職人が研修を受けていたが、今後は若手職人を対象とした入門講座のカリキュラムを用意する。さらに、市外からの受け入れに向けたルールづくりや市外への講師の派遣にも乗り出す。 機能強化に取り組む背景には、少子化に伴う職人の減少がある。市によると、本科は1期生が50人だったが、直近の10期生は過去最少の40人。全国的に若い世代の大工就業者数が減少しており、大学校で受け入れの裾野を広げ、技術の継承を図る狙い。 職人の持続的な確保に向けては、技術を活用する場も必要となることから、伝統的建造物の修復事業の広域展開も目指す。金沢には重伝建(重要伝統的建造物群保存地区)に指定された地区が4カ所あり、修復に関する知識と技術には厚みがあることから、他地域の文化財の修復事業を修了生が受注できる仕組みづくりを検討する。 会合では、機能強化案について「職人確保に向け、一般市民や学生が参加できる研修を設けてはどうか」などとの意見も上がった。今後、詳細を議論し、年度内に計画を策定する。市歴史都市推進課の担当者は「金沢で培われた技術が途切れることのないよう職人大学校の役割を考えていきたい」と話した。