EXILE加入から18年、TAKAHIROが語る現在地 「歌というフィクションを一生懸命伝えたい
ソロとして武道館2デイズライブを成功させるなど、充実の2024年だったTAKAHIRO。EXILE加入から18年、歌の正解を探し続けながら進む、その道程に迫った。AERA 2024年12月16日号より。 【写真】TAKAHIROさんの別カットはこちら * * * ──充実した年を締めくくるクリスマスライブで新曲「Winter Song」を初披露する。 今年ソロとして行った武道館2デイズが終わった日の24時に「DESTINY」という曲を配信リリースしたのですが、そこでひとつ締めくくってしまうような感覚がありました。でも僕の中では物語が続いている気持ちがありましたし、ファンの方に寂しい思いをさせないようなことがしたいと、クリスマスライブで披露する新曲をリリースしようと考えました。 ──「Winter Song」はウォームな質感でありながらも、忙殺される日々や痛みを感じる楽曲だ。 2~3年前にデモをいただいて、ずっと温めていました。歌詞がぼやけているとふわっとした曲になってしまうと思ったので、わかりやすいクリスマスのワードをちりばめて作詞しました。EXILEに加入して18年が経ちますが、いろいろな人と関わる中でどんな人にも悩みがあり、ずっと幸せな人はほぼいないと実感してきました。人は一瞬の幸せのためにいろいろなことを乗り越えていくのではないかと思った時に、地に足の着いた物語を描きたいと思いました。日本ではクリスマスというイベントは数日間で片付けられてしまう。その切ない儚さに、人生との共通点を感じ、そこを意識して制作しました。 ──EXILEの楽曲を含め、多くの作詞を手がけている。 ■聞き手と気持ちを共有 詞には自分の気持ちがそのまま出ます。「いいことを言ってやろう」と思って書くと全く伝わる気がしません。たとえありがちな言葉でも、自分が本当に今言いたい言葉であればメロディーに乗せて歌うと心地が良い。
歌詞を書く時は嘘をつかずに自分の気持ちを言葉にしていますが、歌う時はまた別の向き合い方をしています。例えば、明るい歌詞の曲を明るく歌いすぎないようにしたり、暗い歌詞を逆に明るく歌うことがあります。人が悲しいことを笑いながら話している姿に切なさを感じます。人はプライドや気遣いがあるので悲しさをそこまで人に大っぴらに明かさなかったりする。自分が好きなアーティストの歌っている姿を見ても、とても切ない曲を少し微笑んで歌う姿に感銘を受けます。そう歌うことで歌い手と聞き手の間に溝がなくなり、気持ちが共有できる気がするんです。 音楽は直接生活には必要ないものだとしても、音楽によって心が救われたり元気になってもらえるのであれば、歌というフィクションを一生懸命伝えたい。どこまでいっても100%の正解は見つかる気はしないのですが、その時々の自分が正解だと感じることを試していきたいと思っています。 自分が100%納得のいく歌を歌えている実感はありません。模索をし続けているからこそ面白い。EXILEの一ファンとしてカラオケでEXILEの曲を歌っていた時が一番楽しく歌を歌えていたのではないかと思います。僕は釣りが好きなんですが、ただただ楽しんで釣りをやっている僕と違って、プロの方は生活がかかっているので釣れないととても苦しい。「どんな職業でもそういうものなんだよな」と改めて思いました。 (構成/ライター・小松香里) ※AERA 2024年12月16日号より抜粋
小松香里