中学時代の悔しさをバネに。豪快ヘッドで“大会第1号ゴール”の帝京SBラビーニ未蘭の屈強なボディはいかにして鍛え上げられたのか【選手権】
体重は高校3年間で10キロアップ
[高校選手権・1回戦]帝京(東京B)2-1 京都橘(京都)/12月28日/国立競技場 【動画】開幕戦は白熱の激闘! 帝京vs.京都橘ダイジェスト 中学時代のラビーニ未蘭(3年/帝京)は線が細く、レギュラーとして活躍できなかった。当時のFC東京U-15むさしはタレント揃いの好チームで、夏のU-15クラブユース選手権で優勝を果たしている。 組織としての力はもちろん、個々のレベルも世代トップクラス。MF佐藤龍之介(3年/FC東京)やFW山口太陽(3年/FC東京U-18/トップ昇格内定)といった世代別代表歴を持つ逸材が躍動しており、自分の居場所を見つけるのは難しかった。 実際にU-15クラブユース選手権の決勝では、出番を与えられていない。ラビーニにとって、未来を描くのは簡単ではなかった。 それでも、諦めずに戦い続け、誰よりも努力を重ねた。高校は帝京に進学し、そして迎えた高校3年次の冬。帝京の一員として15年ぶりとなる選手権出場の原動力となり、左SBで不動のレギュラーとして開幕戦のピッチに立った。 失うものは何もない――。京都橘戦に先発した男は、開始早々の5分に魅せた。 「堀江(真広/3年)のクロスがピンポイント。永田(煌/3年)にも相手DFをブロックしてほしいとお願いしていたので、自分がうまくフリーでシュートを打てた」 堀江の狙いすましたCKに、ラビーニは渾身のハイジャンプからヘディングで叩き込んだ。背番号3は感情を昂らせ、これでもかと喜びを爆発させて自身の成長を示すゴールを噛み締めた。 先制に成功した帝京は後半33分に追いつかれたが、その2分後にFW宮本周征(2年)が決勝点をゲット。チームとして17年ぶりの選手権勝利を掴み、2回戦進出を決めた。 イタリアとイギリスにルーツを持つラビーニは昔から身体が強かったように思えるが、中学時代は肉体的に未熟で当たり負けすることも多かった。当時を振り返り、本人はこう話す。 「中学時代はフィジカルが足りなくて、スピードも全然なくてついていけなかった」 悔しさを味わったが、腐らずにトレーニングを続けた。帝京入学後も試合に出られず、陽の当たる場所を歩けたわけではない。だが、課題だったフィジカル強化を目ざし、筋力トレーニングに時間を割いた。 また、自身を変えるうえで大きかったのが食事面。食べる量を意識し、補食の回数も増やした。取り組みの成果は表われ、体重は高校3年間で10キロアップ。屈強なボディができ上がり、今季はポジションを掴んで試合に絡み続けた。 経験も積み、自信も得られたことでプレーも安定。豊富な運動量を武器に攻守に関わり、セットプレーでもターゲットのひとりとして期待されるようになった。 努力すれば必ず成果が出るわけではないが、何もしなければ進歩はない。諦めずに取り組み続けたラビーニは大舞台で期待に応え、自らの可能性を示した。だが、満足はしていない。さらなる飛躍を目ざし、2回戦以降も仲間のために戦い続ける。 取材・文●松尾祐希(サッカーライター)