夜の学校で突然「ドーン」「ガタガタガタ」 ミサイル着弾かと…赤く染まる山頂にくぎ付けに…噴火を経験した私が伝えたいこと
14キロ離れているのに「空振」
中規模噴火による空振を経験したことで、浅間山や活火山に対する見方が変わった。浅間山の火口から佐久長聖中学校までは、遮るものがないとはいえ、直線距離で約14キロ。にもかかわらず、あれだけ大きな爆発音と空振が届いた。当時の新聞記事を見ると、700キロ以上離れた北海道の有珠山や鹿児島県の桜島でも空振が確認されたそうだ。 しかし、噴火の規模としては中規模で、江戸時代の大噴火には遠く及ばない。噴火のとんでもないスケールの大きさに、驚きと興味を持った。
9月1日の中規模噴火後も、浅間山はしばらく活発な噴火活動が続いた。昼間に学校にいた時にも噴火が起き、灰色の噴煙がもくもくと上がる様子を食い入るように見つめていた。携帯電話も持っていなかった時代で、自分では写真を1枚も撮っていなかったが、当時担任だった荒河尚先生(現・佐久長聖高校教諭)がデジタルカメラを持って学校の屋上へ駆け上がって行った記憶があった。 この記事を執筆する直前の今年9月11日、先生に連絡したところ、当時の写真を提供していただけた。灰色の噴煙を上げる浅間山の姿は、20年前の記憶の姿そのままで、噴火が自分にとっていかに衝撃的な出来事だったか、あらためて実感した。
科学や防災に関心を持つきっかけに
火山への恐怖心も生まれたが、火山の噴火の仕組みや地形、火山の恵みにも関心を持つようになった。プレートの沈み込みという地球の構造そのものが噴火や地震に関わっていること、噴火を引き起こすマグマが温泉の熱源になっていることなど、科学だけでなく、防災の分野などにも関心が広がった。
御嶽山噴火も…日本で暮らす以上は
学んだ知識が何かに生きたかは分からない。御嶽山が1979年に有史以来の噴火を起こした山だとは知識として知っていたが、2014年に噴火するまで、日常で意識したことはなかった。 ただ、記者がそうだったように、子どもの時に火山について学んだり経験したりしたことは記憶に残り続ける。記憶がどこでどう現れるかは人ぞれぞれだと思うが、火山に囲まれた長野県、そして日本で暮らす上では絶対にどこかで生きるはずだ。知っているのと知らないのとでは、全く違う。
火山に関心を持ってほしい
参加したこども記者の書いた記事には「もしものことがあったら冷静に判断し、行動できるようにしたい」「たくさんの自然があふれる御嶽山に、十分な装備、準備をしてぜひ訪れてみたい」などの言葉があった。 今回の火山の学校は、噴火の仕組みや防災の知識だけでなく、火山の魅力も知って、火山との共生を意識してもらいたいという狙いがあった。参加した子どもたちや保護者だけでなく、記事を読んだ人が火山に関心を持つきっかけになればうれしい。 (西川大照)