空き家問題への取り組みで社会貢献を目指す ~ カチタス・森川晶事業戦略本部長 単独インタビュー ~
―強みは
中古住宅の仕入れのポイントは、物件の価値を適正に評価することだ。例えば、同じ築年数でも家屋の痛み具合や、メンテナンスの度合いなどは物件によって異なる。住宅を安く仕入れる事ができても、リフォーム代が嵩んで赤字になるということが起こりうる。 そのため、しっかりとした目利きとリフォームによる改善が非常に重要になる。業界の先駆けとして、リフォームと不動産の2つのノウハウを社内で蓄積していることが強みだ。 カチタスでは、1人の担当が仕入、リフォーム、販売を一気通貫で担う。1つの物件に関して熟知した営業担当が案件を主導していくことで、出口を見据えた仕入とリフォームを行うことができる。戸建てのリフォーム、再販は、マンションなどの集合住宅と比べるとチェックポイントが多く、ノウハウが必要で手間がかかるが、それが他社の参入障壁にもなっている。 また、空き家のままになっている理由の多くに、物置として使用しているケースがあるが、物件仕入の際に不要な動産の買い取りなども対応し、顧客からも喜ばれている。 そのほか、年間7千戸の販売件数がある事から、共同仕入れでコストを抑えられることも大きい。
―業界の課題は
日本では、従来新築志向が強かったが、中古住宅の販売を当たり前にし、物件購入の選択肢に入るようにしていくことが大事だ。 世界の中古住宅流通シェアを見ても、日本はまだまだ中古物件の流通が少ない。人口減少フェーズに突入し、有効な国土の活用という意味でも戸建ての中古流通を増やすことが重要だ。中古住宅の買取業者自体の認知も少なく、これからの課題だと考えている。 また、リフォームを担当する職人の技術継承も課題だ。特に、築年数の古い戸建てになると個別性が高く、当時の図面が無い上に、修繕が必要な箇所が多かったりと、施工に際して創意工夫が必要になる事が多い。現地を確認し、きちんと補修できる技術を持った職人の育成は、業界の課題と捉えている。 2023年12月13日に、空き家特措法の一部が改正された。空き家の活用に際し、許認可の合理化・円滑化が進み、管理不全空き家に対しての注意喚起や認知の向上につながったと感じている。 また、2024年4月1日から、相続登記の申請も義務化された。行政からも管理不全空き家に対する注意喚起がされることで、業界的にも追い風になっている。我々も空き家調査のアンケートを毎年実施しているが、特措法に対する意識など、徐々に認知度が上がっている事を実感している。