フランスで増加「環境問題で引きこもる子」のなぜ ジャーナリストの西村カリン氏に話を聞いた
──フランスにはそうした矛盾はないのでしょうか。 フランスでは、矛盾があれば若者が指摘します。実際、夜間に看板の照明がついたままなのはおかしいと感じた若者が、勝手に店の看板の電気を消して回ったことがありました。でも、それで大人が怒ることはありません。むしろ若者の行動のおかげで大人の意識が変わり、ルールまで変わりつつあるんです。 日本で若者が同じことをしたらどうでしょうか? きっと大人は怒るでしょうね。「確かに地球に優しいけれども、勝手に電気を消すのはよくない」と言うと思います。
正しいことを言っても怒られるのなら、若者が何も言わなくなるのは当たり前です。 日本の若者が環境問題に対して無関心に見えるとしたら、それは大人のせいです。若者が自分の考えを表現する場がないのが、日本の教育の弱点であると私は思っています。 ■「議論」のできる環境を学校でつくる ──自分なりの考えを持てと言いながら、実際にそれを表に出せば怒る大人は多い。どうすればいいと思いますか。 子どもたちが意見を言える環境を、まずは学校でつくることです。自分の考えを言うのは大事ですが、SNSで言いたいことだけ匿名で言うのはよくありません。
大事なのは「議論」をすることです。自分の意見を言い、相手の意見を聞く。お互いの意見を取り入れて、どんどん変化していく。そうした議論のプロセスを学ぶことが重要です。 議論は、学ばないとできるようにはなりません。フランスでは教科を問わず、あらゆる授業の中で議論が行われています。 親子で意見が合わないときには、親がきちんと理由を説明することも大事です。人によりますが、3歳ぐらいになると自分の意見や言動の理由を言える子も出てきます。子どものうちから意見のやりとりをすることで、議論する力の下地をつくることはできます。
議論の仕方を学ばないと、大人になっても忖度ばかりで相手の望むことだけをする人になります。そんな大人が増えれば、誰もリスクを取ろうとしなくなり、社会の成長が止まってしまう。 そうならないようにするためには、従順なサラリーマンではなく、自分の考えを持って議論のできる国民を育てなければなりません。厳しいグローバル環境の中で日本の立場を強化するためにも重要なことだと思います。 ――フランスでは、1クラスの人数が日本よりも少ない点でも、話し合いの場を持ちやすい環境にできているのではないでしょうか。