ロシアの虎の子・バルチック艦隊に照準、NATOが最大規模の演習
■ バルト海で展開されるロシアのA2/AD戦略 東・南シナ海と同じことが起きている 一方、プーチン大統領の目的は、バルト海の支配権を握ることであり、それに固執している。 そのため、ロシア軍は「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」を基本戦略とし、大々的にハイブリッド戦を展開している。 米第6艦隊およびNATO海軍打撃支援部隊の司令官、トーマス・イシー海軍中将は、BALTOPS前の記者会見で、ロシアがバルト海域において接近阻止(A2)や領域拒否(AD)を含む「重要な能力」を有していると述べた。 そして、カリーニングラードには、ロシアのバルチック艦隊が多数の地対空ミサイルや対艦システムとともに駐留していると指摘した。 NATO軍は、バルト海を航行中の艦艇に対して、ロシア空軍の「SU-24」戦闘機が数回にわたり「攻撃のシミュレーション」を仕掛けるなど、この海空域でロシア軍機によるバルト諸国を含む北欧・東欧地域での活発な「特異飛行」などを受けている。 また、ロシアのバルト海における海軍のプレゼンスは、ハイブリッド戦の一環としての商船隊によって支えられているという。 この影の艦隊は、商船には不要だとする高度な通信機器を装備し、ゴトランド島沖のスウェーデンの排他的経済水域(EEZ)内で不穏な活動を行っている。 また、西側の制裁に違反してバルト海経由でロシアの違法石油を輸送した疑いも持たれている。 最近では、偽の無線信号を発信して受信機を騙し、航空機のナビゲーションシステムを妨害する「GPSスプーフィング」が過去数か月間にわたってバルト海沿岸地域などで頻発していると伝えられている。 わずか48時間あまりの間に、多数の民間機を含む1614機が影響を受けたという。 攻撃は、ロシアの飛び地カリーニングラードから行われている可能性が高いと周辺諸国はみている。 バルト海は、ロシア海軍/バルチック艦隊にとっては重要な軍事的要衝であり、ロシア軍はここに電子戦のリソースを集約させ、従来型の戦闘手段と組み合わせた「ハイブリッド戦争」の一環として電子攻撃を行っているとみられる。 翻って、これらと基本的に同じ活動・行動が、中国軍によって東シナ海、南シナ海でも行われている点に注目せざるを得ない。 中国軍(中国人民解放軍)は、ソ連軍(ロシア軍)と共産主義革命軍としての共通項を持ち、ソ連の支援を受け、ソ連軍の組織、兵器・装備、戦い方、指揮統制、教育訓練、人事制度などに学びつつソ連軍をモデルに建設してきた歴史がある。 いわば「ソ連型の軍隊」であり、現在でも共同訓練・演習など行い、ロシア製兵器の運用方法や実戦経験を有するロシア軍の作戦教義などの学習を通じて、いわゆる相互運用性を向上させている。 その観点から、中露の活動・行動の類似性については、中国軍がロシア軍に倣い、その戦略や戦法を導入する傾向にあると見るのが適切であろう。 そして、中国とロシアの共闘が、今後も続いて行くと見ておかなければならない。