投資判断を左右する「経営者メッセージ」、響く伝え方は? オリックス、塩野義製薬の統合報告書に見る
社長メッセージに「人的資本への向き合い方」を見る
以前は、投資家が経営者の声に触れることができる機会は限られており、そうするためには株主総会や決算説明会に足を運ぶことくらいしかできませんでした。しかし昨今は、スマートフォンやタブレット端末で簡単に統合報告書を読めるようになっているだけでなく、IR動画など、社長メッセージを映像で発信する企業も増えています。このように、さまざまなチャネルで経営者の発信に触れることができるようになり、社長メッセージから情報収集することは投資家にとって当たり前になっています。 また、人的資本の重要度が高まっていることも、社長メッセージに注目が集まる要因の一つです。S&P 500(※)の市場価値に占める無形資産の割合は年々増加しており、2020年には9割に達しています。 (※)S&P 500:米国の主要500社を対象とした時価総額加重平均型の株価指数。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が算出・公表 これは、企業価値評価において非財務情報が大きな意味を有していることを示しており、日本市場においても非財務情報が重視されるようになっています。とりわけ人的資本への注目度は高く、人材が企業価値の源泉であると認識する投資家が増えています。 言い換えると、投資家の関心は「この会社は人的資本にどれだけ投資しているのか」に向いており、人的資本経営の姿勢を決めるトップである経営者の発言に一層注目が集まっているといえます。投資家は社長メッセージから人的資本経営への姿勢を読み取り、未来の企業価値を推し量ろうとしているのです。
実は個人投資家も知りたい経営者の「人柄」
当社が行った個人投資家の投資方針別情報収集動向についての調査では、情報収集が難しいと感じる情報の1位は「経営者の人柄や能力」でした。中でも、3年以上株式を保有し、主に値上がり益を重視する「期待投資家」において特に、「経営者の人柄や能力」に関する情報期待度が高いにもかかわらず、情報満足度は低いという結果が出ています。 本調査結果から「この会社の経営者はどのような人柄なのか」「どのようなバックボーンを持ち、どのような能力に優れた人なのか」といったことに関心を持っている個人投資家が多いことがうかがえます。 自分の大切な資産を預けようとしているのですから、その会社の経営者について知りたいと思うのは、ある意味当然のことです。経営者の人柄や歩んできた道のりを知ることは、投資家が社長メッセージに求めている要素の一つだといえます。