【ラグビー】好敵手がふたり。萩井耀司[明大1年/SO]
もうひとりのライバル、早稲田の服部亮太の存在を正しく認識したのは高校3年のときだった。春の選抜大会、佐賀工業の試合を眺めていると、BKに図抜けた選手がいると気づいた。素直に「すごい」と感じた。 今年3月におこなわれた、高校ジャパンのイタリア遠征ではチームメイトになった。10番(萩井)、15番(服部)のタテの関係で3試合を戦い、改めてその実力を知った。 「本当にすごいと思います。全部うまいです」 いま大学ラグビーで最大の注目を集める赤黒のスタンドオフは、賞賛を浴びるキックだけでなく、ランもパスも高いレベルでこなす。 対抗心を持ちながらも、前述の高校ジャパン招集をきっかけに友情を築いた。遠征中は常に行動をともにし、入学直後には食事にも出かけた。普段も連絡を取り合い、10月20日のジュニア早明戦で再会した折には長時間話し込んだ。 ただ不思議なことに、15人制ではいまだ直接対決の経験がない。高校、大学とすれ違いが続く。 もしや12月1日に予定される100回目の早明戦で相まみえたら? ともに背番号10のジャージーに袖を通したとしたら? 「嫌ですね。なんか嫌ですね。でも楽しみでもあります。仮にスタメンではなくても試合をしたいとは思っているので。負けたくないですね」 いつか訪れるであろう友との対戦に向けて、そして不動の司令塔となるため、自主練習に非常に多くの時間を費やす。重視するのはキック。春はほぼ毎日、徹底的に蹴り込んだ。シーズンが始まってからはウエートトレーニングに割く時間も増えたが、怠る日はほとんどない。ロングキックは必須、日によって50:22やドロップゴールを蹴り分ける。 わかりやすいほどの練習の虫だ。入学から今日この日に至るまで、休んだのは7月のオフの2週間だけ。そのうち後半の1週間はウエイト、キック、ランニングをこなした。チームの活動がない月曜も、試合の翌日も必ず体を動かしている。 「やはり試合に出たいので。そのためには自分の武器をひとつでも突出させないといけない。人の見ていないところでトレーニングをして、全体練習の場でしっかりアピールできるように心がけています」 対戦相手の研究にも余念がない。映像を丁寧に見る。「勝つための準備をしっかりしたい」と高校時代に始めた習慣だ。次に戦う筑波(11月3日)の対抗戦の試合はすべてチェック済み。相手の強みと弱点、どうすれば自分たちが有利にゲームを運べるか。すでに頭に入っている。帝京と早稲田の研究にも着手し始めた。 生真面目で努力家のルーキーが、思い描く未来を実現するための日々はこれからも続く。 (文:三谷 悠)