事務次官経験者を汚職で逮捕 捜査2課の金字塔に 特養ホーム汚職 警視庁150年 102/150
平成8年秋、薬害エイズ事件で製薬業界との癒着が明らかになった厚生省(現厚生労働省)に新たな疑惑が発覚する。 特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人との癒着を巡り、警視庁捜査2課は11月18日、収賄容疑で厚生省元課長補佐、贈賄容疑で法人代表を逮捕。厚生省の立て直し役として7月に就任したばかりの事務次官も長年利益供与を受けていたとして11月19日に更迭された。 捜査2課は12月4日、現金6千万円、車2台を受け取った疑いで元次官の逮捕に踏み切る。元次官は車を受け取ったことは認めたが、現金については否認。裁判では、事務次官経験者としては初めて懲役2年の実刑判決が確定し服役した。 捜査2課の捜査員が元次官に目をつけたのは、逮捕からさかのぼること約7年前。元次官は厚生省部長時代から頻繁に接待を受けており、ゴルフ代金の付け回しが目立つことから、本格的な捜査に着手した。 捜査の末、審議官や課長ら要職にある職員ら省ぐるみの関与も明らかになり、18人が懲戒処分を受けた。当時の小泉純一郎厚相が対応に追われ、菅直人前厚相の任命責任も問われるなど、福祉を食い物にしていた官僚の汚職に厚生省の信頼は失墜した。 汚職事件の捜査は、国会議員や高級官僚が対象の場合は地検特捜部、それ以外は警察の捜査2課という暗黙の〝住み分け〟があるとされる。セオリーにとらわれず、警視庁捜査2課が100人以上の捜査員を投入して元次官の逮捕に至ったこの事件は、今も金字塔として、語り継がれている。(外崎晃彦)