「学校カメラマン」はもう限界 5千枚撮影で日給2万円 首都圏の運動会に関西から助っ人も
運動会や修学旅行、文化祭など、学校行事を撮影する「学校カメラマン」の不足が深刻化している。背景にはコロナ禍と、「激務に報酬が見合わない」という課題があるようだ。 【写真多数】「もうギリギリ」と話す現役カメラマンと、学校写真の数々 * * * これから多くの学校で運動会シーズンを迎える。徒競走やリレーで力走し、団体競技に挑んだ記憶は、子どもにも家族にもよい思い出になることだろう。そんな運動会を写真として残すのが、学校カメラマンだ。 今年2月、ひとつの「炎上」で学校カメラマン不足の実態が表面化した。ある撮影会社が、小中学校の入学式を撮るカメラマン約100人をXで募集したのだ。 すると、「SNSで集めたよくわからない人たちが子どもを撮るなんて、マジで怖い」「何かあったらどうやって責任をとるつもりなんだろう」などと、批判が相次いだ。 ■「代写カメラマン」が足りない 「Xの投稿は、『代写カメラマン』を募集したものです。本当に人手が足りず、ギリギリだったのでしょう」 関西在住のカメラマン、松本さん(30代・仮名)はそう話す。 多くの場合、学校カメラマンとして撮影実務を請け負うのは、地元の写真館や写真スタジオのカメラマンだ。だが、行事日程は複数の学校で重なることが多く、スタッフだけではまわりきれない。そのため、助っ人のカメラマンに業務委託して撮影を分担する。彼らは写真館の撮影の代理を務めることから、「代写カメラマン」と呼ばれる。 松本さんは大学で写真を学んでいたとき、先輩の紹介で初めて代写カメラマンを務めた。その後、中堅の卒業アルバム制作会社を経てフリーになり、学校撮影をメインにしていた時期もある。現在は出版社を中心に活動しているが、「学校写真の師匠」が経営する首都圏の写真館から声がかかれば、代写カメラマンの仕事も請け負っている。
今春も首都圏の入学式の撮影を頼まれた。関西から代写カメラマンを呼ばなければならないほど、人手不足は「深刻」だという。 Xに投稿した会社は必要な人数を確保できなかった。だから、異例ともいえるXでの募集にふみきったのではないか――。そう松本さんは推察する。 ■Xデーは10月12日? 写真館の経営者らで構成される日本写真文化協会は、カメラマン不足についてこう語る。 「以前から、学校行事が重なることが原因でカメラマンが不足します。最近はコロナ禍明けで学校行事が再開され、人手不足がクローズアップされているということだと思います」(事務局の澤田京一さん) だが、昨今の「代写カメラマン」獲得競争はあまりに苛烈だ。なんと2024年4月現在、すでに来年の学校行事のスケジュールが押さえられていたりする。 「今秋の首都圏の運動会の撮影も受けました。10月12日に幼稚園や保育園、小中学校の運動会が集中していて、いまだカメラマンを確保できていない写真館もあるようです。代写カメラマンの募集はいつでもあります」(松本さん) 記者が求人サイトを覗いてみると、すぐに募集が見つかった。 “副業も大歓迎。写真撮影が好きな方、興味がある方にピッタリなお仕事です” “これからカメラマンとしてやっていきたい、という学生さんもご相談ください!” 記者は長年、写真雑誌「アサヒカメラ」の編集に携わってきたが、代写カメラマン経験者の知り合いは多い。代写をメインにしているカメラマンもいる。だが、学校行事が軒並み中止になったコロナ禍をきっかけに、この業界から去った人は少なくない。 東京商工リサーチによると、昨年1~8月の写真館などの倒産は過去最多の20件だった。以前からの苦境に加え、コロナ禍で入学式、修学旅行、結婚式などが減少し、関連支援も打ち切られたことが倒産の原因だという。代写メインのカメラマンの窮状は推して知るべしだ。