奈緒&猪狩蒼弥、シリアスな撮影現場で「お互いの存在が光であり、希望だった」
■男女の性の不条理を描く衝撃作に「向き合ってみたい」と強く感じた
累計部数100万部を突破した鳥飼茜による同名漫画『先生の白い嘘』が実写映画化。男女の性の不条理に真正面から向き合った衝撃作で、難役に果敢に挑み新境地を開いたのが、主演の奈緒と本作で映画単独初出演を果たしたHiHi Jetsの猪狩蒼弥だ。激しくもがきながらも、相手との関わり合いを通して力をもらっていく役柄同様に、奈緒と猪狩も「お互いの存在が光であり、希望だった」と声をそろえる。飛び込む上で覚悟を要するような作品に挑戦した理由や、支え合った撮影現場の様子について、2人が語り合った。 【別カット】奈緒&猪狩蒼弥の撮り下ろし写真(全6枚) 本作は、ひとりの女性が抱える「自らの性に対する矛盾した感情」や、男女間に存在する「性の格差」に向き合う姿を描くことで、人の根底にある醜さと美しさを映し出したヒューマンドラマ。男女の性の問題に葛藤しながらも、平凡な教師を装って教壇に立っていた高校教師の美鈴(奈緒)が、担任する男子生徒・新妻(猪狩)の不倫疑惑事件をきっかけに、それまで見て見ぬふりをして“嘘”で誤魔化し続けていた、自身の中に潜む感情に向き合っていく。 ――全編にわたって、役者の皆さんの魂を込めた熱演に圧倒されました。奈緒さんは、男女の“性差”を“格差”として振りかざす男性に力強く立ち向かっていく美鈴を演じましたが、飛び込む上では覚悟が必要になるような役柄だと想像します。演じてみたいと思った理由を教えてください。 奈緒:もともと鳥飼茜先生の原作を読んでいたので、お話をいただいた時には「映像化するのか」という衝撃があって。すでにたくさんの読者の方々がいらっしゃる本作ですが、「もっと知ってもらいたい」「この物語に向き合ってみたい」と思うようなパワーを原作から感じていました。 また、男女の性の不条理というのはとてもデリケートな問題ですが、一人一人がそのことについて考えるきっかけをくれるような作品です。私自身、この作品を通して「どう考えているのか」と誰かと話してみたかったという気持ちもありました。 ――原作を読んで、ご自身も考えさせられるものが多かったのですね。 奈緒:男女の性の違いということもそうですし、それに限らず、人間はお互いにあらゆる違いを持ちながら生きているもので、それによって不自由が生じることもあります。じっくりと考えられていない場合もあり、だからこそ一度立ち止まって、お互いの違いについて話す機会があると良いのではないかと感じました。 俳優という仕事で考えるならば、数ヵ月ごとに作品に取り組むチームが変わって、そこにはいろいろな人がいて、一人一人が違う考え方をしていることもあります。その時に、対立するのではなく「どのようにしたら歩み寄れるのだろうか」と考える機会は、日々においてたくさんあって。それぞれに違いがあることで、傷つけてしまうこともあれば、希望になることもある。これは本作のテーマに通じることで、そういったことについてより話しやすい環境になれば良いなと思っています。 ――猪狩さんが、強烈なトラウマを抱える高校生の新妻を演じたいと思った理由も教えてください。 猪狩:「やらない」という選択肢は、僕の中にありませんでした。原作を読んだ時に、とても重大なテーマを描いた作品だなと感じて。僕自身、男女の性の不条理について改めて考える機会になりましたし、皆さんが考えるべきテーマでありながらも、なかなか考えられないことだとしたら、この作品に参加する意義はとても大きいなと。悲しんでいる人、苦しんでいる人の気持ちを芯まで理解することは難しいけれど、少しでも寄り添うことが出来るのであれば全力でやりたい、やらないとダメだと思いながら作品に向き合いました。 ――風間俊介さんが、人当たり良く見えながらも、裏では女を見下して暴力を振るう早藤役を演じています。とても恐ろしい役柄として登場しますが、風間さんとの共演はいかがでしたか? 猪狩:早藤が、奈緒さん演じる(美鈴)先生に電話越しで、ひどい言葉を投げかけるシーンがあります。劇中だと僕が演じる新妻は別の空間にいるのですが、風間さんが「電話をかけているシーンを、新妻に見せたい」と提案してくださって、僕は早藤がひどい言葉を投げかける場面を目の前で見ることになりました。そこで改めて、早藤は本当に嫌なやつだ、本当にひどいやつだと心の奥底から思うようになって。そういった気持ちを引きずり出してもらって、風間さんにはものすごく感謝しています。 風間さんの演技は、「本当にこういう人じゃないよね?」と思うくらいリアルで、めちゃくちゃ怖かったですね…。風間さんは、早藤と新妻が対峙するシーンまでは、あえてドライな感じで対応されていたのですが、撮り終わってからは夢の国の話をしてきたりして(笑)。なんだかそれすらも怖くて、今でも若干、風間さんが怖いです(笑)。