原発再稼働 ゼロリスクは幻影 フランス「サイエンスパビリオン」館長 ジャック・ロシャール氏インタビュー
フランスの科学博物館「サイエンスパビリオン」の館長で、国際放射線防護委員会(ICRP)前副委員長のジャック・ロシャール氏は福島民報社のインタビューで、原発の再稼働について「過去の経験から学び、最新の科学技術の活用を含めて社会への影響がなるべく小さくなるようにすべき」との認識を示した。 ―チェルノブイリ原発事故や福島県の原発事故の被災地に何度も足を運び、住民と対話を続けてきた。 「二つの事故から学んだのは、被災者と専門家、行政関係者による対話の大切さだ。対話があってこそ人々は放射線の影響を理解し、原発事故後にさまざまな分野でどう対処すべきか共通認識を持つことができる。意見が対立する場合は、公平性と敬意を持って耳を傾けることが大切だ。福島では、ICRPやNPOの協力を得て、被災した地域の住民と生活改善の方法を探る対話を続けてきた。復興まで長い道のりだが、住民が望む限りは今後も続け、見届けたい」
―震災を受けて停止していた宮城県の東北電力女川原発2号機が再稼働した。原発のリスクにどう向き合うべきか。 「正常時は作業員、事故が起きた際は住民の放射線防護も求められる。原発の再稼働については過去の経験から学び、最新の科学技術の活用を含めて社会への影響がなるべく小さくなるように判断をすべきだ。ゼロリスクというのは幻影だ。われわれはできる限り備える義務があるが、全ては予測できない。だからこそ、過去の失敗から学ぶのは重要で、多くの専門家が福島に足を運んでいる。日本、フランスをはじめ、原発が稼働する各国にとって福島の経験から学べることが多い。事故に備えるため福島の記憶や教訓を伝えていくことが重要だ」 ジャック・ロシャール フランス原子力防護評価センター(CEPN)所長、国際放射線防護委員会(ICRP)副委員長などを歴任。チェルノブイリ原発事故の被災地で専門家と住民とのリスクコミュニケーション活動(エートスプロジェクト)を推進した。本県でも住民や専門家、行政関係者の対話集会「ダイアログセミナー」の開催に携わった。現在は長崎大原爆後障害医療研究所と広島大の客員教授を務める。フランス在住、74歳。