“月9”群像劇のフォーマットを作った木村拓哉主演<HERO>
自分の貴重な時間を使ってドラマを見ることが趣味の、いわば“エンタメオタク”にとって、往年のヒット作ドラマからしか得られない栄養というのがある。新作で評価が定まってないドラマからお宝を掘り起こすのも楽しいが、ヒット作というのは懐かしさも相まって満足度も高いはず。 【写真】2014年「HERO」第2シリーズで再登場した美鈴(大塚寧々) 2024年4月からのFODでは、人気のフジテレビドラマを毎月5作品分、FOD・TVerにて毎日無料公開する「#ドラ活 浸れ、超自分的ドラマ生活。」を開催中。対象作品のひとつである、木村拓哉主演のドラマ「HERO」第1話(8月6日火まで無料公開中)をチェックしてみよう。 (以下、ネタバレが含まれます) ■平均視聴率34.3%の驚異的ヒット作 木村拓哉主演の“月9”ドラマが「ロングバケーション」(1996年)、「ラブジェネレーション」(1997年)などの恋愛モノが続いた後、松嶋菜々子主演「やまとなでしこ」(2000年)の次の作品として始まったのが、2001年1月期放送の「HERO」第1シリーズである。平均視聴率34.3%という驚異的人気を博した。 「HERO」は元不良で中卒、大検を受け、司法試験に合格し検事になった久利生公平(木村)が青森から東京地検の城西支部の刑事部に赴任するところから始まる。 表には出さないが、人一倍正義感が強く、また人を見た目で判断することなく常に真実を求める久利生。古い習慣にとらわれ、出世や保身ばかり気にする他の検事や事務官たちは、事件の大小関係なく熱心に捜査をしたり、ラフな服装で仕事をしたりする彼のことが理解できない。事務官の雨宮(松たか子)も、久利生の破天荒な仕事ぶりに驚き、あきれるばかり。城西支部の面々は、久利生と出会ったことによって、ある時は反発を覚え、ある時は感化されていく。 このドラマは、そういう個性の強い人間達が巻き起こす群像劇。最も個性の強い、変わり種の主人公が活躍し、仲間たちの信頼を得てチームワークを強固なものにしていくというフジテレビの“お仕事チームドラマ”スタイルは、この「HERO」で固まった印象がある。山下智久主演「コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-」(2008年ほか)、窪田正孝主演「ラジエーションハウス」(2019年ほか)、竹野内豊主演「イチケイのカラス」(2021年)など数多くの作品でヒットしているフォーマットだ。 ■久利生は被害者の声なき声に耳を傾ける 第1話は、東京地検城西支部に、青森地検から若手検事・久利生(木村)が転勤してくるところから始まる。真面目な雨宮(松)、お色気満点の美鈴(大塚寧々)、美鈴と不倫中の芝山(阿部寛)、雨宮に思いを寄せる江上(勝村)ら検事たちのほか、末次(小日向)、遠藤(八嶋智人)ら個性派事務官達は久利生の自由さにあ然とする。 第2話は、K1の試合を観るため定時帰りしたい雨宮が久利生に振り回されながらも事件の真実にたどり着いていくドタバタを描く。 城西支部の面々は、通販好きで女好きのチャラい久利生を変人扱いしながらも、どんな事件でも被害者の思いを第一に、徹底的なこだわりや執着心を忘れない姿勢を見直していく。茶色のダウンコートに長めの髪型で、普段は軽口を叩きながらも時に鋭く仕事に向き合う姿は、当時、日本の誰もが憧れるかっこいい“ヒーロー”だったのだろうということが分かる名作だ。