「のんびり猫カフェでも」元WBA王者の内山高志の涙無き引退発表の理由
元WBA世界Sフェザー級王者の内山高志(37、ワタナベ)が29日、六本木のテレビ東京のスタジオで現役引退を発表した。2005年7月にプロデビューしている内山は、12年間に及ぶプロ生活にピリオドを打った。「怪我やモチベーションの低下で練習で追い込めなくなり、前よりも強くなれない」と考えたのが、引退理由。悔いなき決断に涙はなく、さわやかな笑顔があふれた。今後の第2の人生については「ジム経営」や「猫カフェ」プランまであるという。KOダイナマイトと呼ばれ、ボクシングの醍醐味であるKOシーンを存分に見せてくれた歴代3位となる11度防衛を果たした不世出の元王者のプロ戦績は、27戦24勝(20KO)2敗1分けとなった。 「引退しようかな」と頭をよぎったのは4月ごろ。 「大晦日に負けてすぐにロードワークを走りだしたけれど、モチベーションが低下した。ケガも多くて、もう一度やるには、肘の手術もしなければならなかった。そう考えると何か月もかかる。前以上に強くなれない気がした。モチベーションがもてなくなった」 それでも思い悩んだ。 「試合を見ているうちに気持ちが変わるのではないか」と自分を試したが、時間が経過しても、どんな苦しい練習も乗り越えるほどの、燃え上がるようなモチベーションは戻らなかった。 引退が固まったのは6月だった。 「前みたいに練習で追い込めなくなった。100パーセントの努力ができず、中途半端な練習で試合してはうそになる。必死に努力して見てもらうことがモットー。前よりも死ぬほど努力のできない人間がリングに上がるのは、ちょっと違うかな。と。引退を決意した」 誰に相談することもなく自分で決めた。 ストイックに妥協することなく自らを追い込んだ。試合が決まるとフィジカルコーチの土居進さんの元を訪れ「パワーMAX」と、呼ばれる負荷のかかる固定された自転車漕ぎのトレーニング機器を使い、スタミナを養成した。あまりに過酷なトレーニングで胃の中のものを吐き出すアスリートが続出するため、関係者の間で‘吐き気製造マシン’と恐れられたトレーニングだが、内山は自らそれを求めた。 本格的なフィジカルトレーニングだけでなく「食事も勉強してやってきた」。野菜ソムリエの免許をとるほど栄養学を学び、試合前になると、体調を崩してはダメだと、火を通さないものは一切口にしない。その体脂肪は一桁を維持して、惚れ惚れする肉体美を誇った。「36歳まで体力の衰えは感じなかった。でもちょっとづつ反応、反射神経が鈍ったことを感じた。それを補うため体力を強化した。それでも怪我をしてしまう。怪我と付き合うのが、最大のポイントだった」という。