『ブラックペアン2』二宮和也の一人二役の意味がここに “心臓で繋がっていた”渡海と天城
緊急オペを執刀した佐伯(内野聖陽)にあらわれた目の異変。前回のラストで天城(二宮和也)がそれについて指摘したことから、まずその真相が明らかになるのかと思っていたが、まさかそれよりも先にもっと大きな――ほとんどこのドラマの核心ともいえる別の新事実が明らかにされるとは。それは“オペ室の悪魔”と呼ばれ、かつて東城大を去った渡海征司郎(二宮和也/二役)と、天城の関係。1日に放送された『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)第8話の話題は、もはやそれに尽きるといってもいいだろう。 【写真】意味深な表情で電話をかける渡海(二宮和也) ※本稿は『ブラックペアン シーズン2』の重要なネタバレに言及しています 無事に日本医師会の会長選に勝利した佐伯は、東城大の院長選への再出馬も表明。“世代交代”を掲げる(この時点で彼の医師生命は決して長くはないのだと予感できるのだが)佐伯に対し、次期院長の座を狙っていた江尻(大黒摩季)は激昂。真っ向から対立する。そんななか、天城による患者への“賭け”をめぐって厚生労働省の役人からスリジエハートセンターの認可に関して待ったがかかる。あっさりとセンター長の座を退こうとする天城を見た世良(竹内涼真)は、実力で納得させるべきだと新たなオペを提案。すると天城は、患者の候補が一人だけいると仄めかすのである。 第1話で世良から渡海の名前を聞いて表情を変えていた天城。もうその時点で、天城と渡海の間には“瓜二つ”であること以外の何らかの接点があることがはっきりと示されていたようなものである。さらにその第1話のラストから幾度も、天城の脳裏にフラッシュバックするように映されてきた2人の子どもの姿。原作ではまったくの他人であった両者だが、このドラマ版においてはどちらも二宮が演じるということも相まって、2人が“生き別れた双子”なのではないかという仮説がSNSなどでは早い段階から流れていた。 そして今回、渡海が(その後は猫田が)使っていた仮眠室の荷物のなかから天城が1枚の写真を見つけることで、前述の仮説がそっくりそのままその通りであったことが証明される。ある意味では予想通りすぎて、なんの捻りもないような展開に思えるわけだが、そこに異なる方向性のひねりが加えられる。引き離された原因が天城の心臓の病であり、それを継続的に治療するためにフランスで活動する医師のもとに養子に出された……と思い込んでいた天城。しかし本当は、心臓に病を抱えていたのは渡海の方であり、彼を救うために行われた違法な処置が災いし2人は引き離され、天城もまた心臓に病を抱える身となってしまったというのだ。 ところで先述した第1話のように、天城はすでに渡海のことを生き別れた双子であると知っており、東城大にやってきたことで彼に関する――同時にそれは天城自身に関することにもつながる――情報にたどり着くことになった。となると渡海のほうも、ずいぶん前から天城の存在を知っていたと考えるのが自然ではあるが、今回天城が仮眠室を捜索した直後に佐伯に電話を掛けてくるというシーンがある。渡海と親しかった猫田はすでに東城大を去っており、世良も佐伯の口から「渡海」という名が飛び出すのをドア越しに聞いて驚きの表情を浮かべている。となると、誰か渡海と通じている人物が東城大にいるということなのか。些細なことであるが、どうにも気になるところだ。 さて、天城が倒れて“ダイレクト・アナストモーシス”によるオペが必要となり、佐伯は高階(小泉孝太郎)にも協力してもらい、エルカノを使ってそれを行おうとする。今回はダーウィンを併用した“エルカノ・ダーウィン”ではないにしろ、前回まで何度かに渡って描かれてきた医療AIという新技術は、東城大と維新大の争いの道具としてだけでなく、もっと重要な意味を為すものだったというわけだ。しかしそこで、冒頭でも触れた佐伯の目の異変――緑内障による視野の欠損だと明かされる――などによって続行が困難となり、颯爽とオペ室に現れる渡海(しかも東城大のユニフォームを着ている!)。やはり『ブラックペアン』という物語は、渡海のためにこそあるものなのかもしれない。
久保田和馬