「プロなんて考えてもいなかった」ヤクルト1位の160キロ右腕・中村優斗は公務員になりたかった
公務員になりたかった
今年のドラフトでヤクルトが一本釣りしたのが、愛知工業大の中村優斗(21)だ。 今年3月には、宗山塁や金丸夢斗と共に侍ジャパンのトップチームにも選出された。 【思わず二度見】「番長」がガン見で観戦…清原和博の長男・正吾「意外すぎる」素顔写真 長崎県は諫早市の出身。ドラフト上位で指名されるような選手は、小学生時代に12球団のジュニアチームに所属していたり、中学時代から日の丸を背負ったりして名門私学に進むケースも珍しくない。 そういう野球エリートからしたら、大村湾、有明海、橘湾という3つの海に囲まれた諫早で生まれ育った中村は異色の経歴だろう。 「中学時代は軟式野球部で、強豪校から勧誘されることもありませんでした。将来は公務員になりたくて、諫早農業の農業土木科を選びました。プロ? まさか、考えてもいませんでした」 ライフラインなど社会基盤の設計を学ぶ難関の学科で、高校から長崎県庁や国土交通省、農林水産省などに就職する卒業生が多いという。 ◆「ナンバーワンは金丸だと思っている」 プロを目指すきっかけは2年夏に愛知工業大監督の平井光親氏と出会ったことだ。強豪とは言えない公立校に、無名ながら将来性が有望な右腕がいると聞きつけた平井氏は2年生の中村を勧誘していた。 「高校最後の夏の甲子園が中止になって、就職活動のために独自大会への参加を泣く泣く諦める仲間もいました。野球がやれない仲間のためにも、自分は野球を目一杯頑張ろうと思いました」 平井氏の誘いに応じ、長崎から愛知に行って、1年春のリーグ戦からメンバー入り。強豪の中京大学から初勝利を挙げた。 「その時に147キロを記録したんです。夏になって、コロナが蔓延して、一時期、隔離部屋で過ごした時期があったんですが、罹患していなかった自分は、その部屋で自重トレーニングをしたり、野球のことをYouTubeやSNSで勉強したりした。ウエイトトレーニングは感染予防のために器具の使用は禁止だったんですけど、結果的にはその時期のトレーニングも上達には幸いしたのかもしれません。秋のリーグ戦で150キロを超えることができて、そこで初めて、プロを意識しました」 本格派右腕として中村はリーグ戦の奪三振王となり、今春には侍ジャパンのユニフォームも着た。 「村上(宗隆、東京ヤクルト)さんは気軽に話しかけてくださって、一流選手の懐の深さを感じましたし、試合前の声出しなどの様子を見ても、戦う姿勢が感じられた。(福岡県出身で同級生となる)山下舜平大(オリックス)に真っ直ぐの握りを教わった……というか、握り方が似ていたので、自分の握りは間違ってないのかなと思えました。あとは隅田(知一郎、埼玉西武)さんにチェンジアップの投げ方を質問したり。プロになる前に、プロと一緒の時間を過ごすことができたのは、貴重な経験でした」 やはり160キロに迫る真っ直ぐが最大の武器であることは間違いない。変化球は絶対の自信を持つ縦横のスライダーにフォークボール、そしてチェンジアップ、カットボールと器用に多くの球種を操る。 「コントロール、四死球率の低さ、変化球のキレ、スタミナ……球が速いだけじゃないのが自分の特徴だと思っています」 中村は同級生の金丸をライバル視する。 「世代ナンバーワンのピッチャーは金丸だと思っている。いつか追い越したい。自分はプロになることが目標じゃなく、プロで活躍することが目標。そこを見据えてトレーニングを続けてきました。今ではダンベルを使ったトレーニングもメニューに多く入れて、ストイックにやっています。野球が上手くなるための取り組みは何でも好きになって取り組んでいます」 剛腕の未来は明るい。 取材・文:柳川悠二
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