【公演レポート】“善き人”佐藤隆太らが生バンドと届ける「GOOD」開幕、「豊かな時間を届けられるように」
佐藤隆太が主演を務める「『GOOD』-善き人-」が、明日4月6日に東京・世田谷パブリックシアターで開幕。これに先駆け本日5日に、フォトコールと会見が行われた。 【画像】「『GOOD』-善き人-」フォトコールより。(他18件) 本作は、ローレンス・オリヴィエ賞受賞演出家のドミニク・クックが、C.Pテイラーの戯曲をリバイバル上演した作品。デヴィッド・テナントが主演した「《ナショナル・シアター・ライブ2023『善き人』》」が昨年日本で上映されたことでも知られている。今回の上演版では翻訳を浦辺千鶴、演出を長塚圭史が担当。劇中では、ヒトラーが台頭し始めた1930年代のドイツを舞台にしたストーリーが展開する。善良なジョン・ハルダー教授(佐藤)は、ドラマチックな瞬間を迎えるとき、頭の中で幻の楽団による演奏が流れ始めるという体質だった。あるときハルダーは過去に書いた論文を読んだヒトラーに気に入られたことで、自身の意図とは関係なくナチスに取り込まれていき……。 フォトコールでは本作の冒頭約20分間が披露され、ハルダーが認知症の母(那須佐代子)や、唯一の友人であるユダヤ人精神科医モーリス(萩原聖人)とやり取りしたほか、楽団の生演奏に乗せてハルダーとその妻ヘレン(野波麻帆)がオペラのように歌唱するさまが描かれた。 ステージは三方が大理石のような質感の白い壁に囲まれ、床には白いボックスがいくつも置かれている。上手側の隅はバンドの演奏ブースとなっており、ハルダーの妄想の楽団が具現化された。佐藤は屈託のない笑顔で、“善き人”ハルダーを体現。その一方で、ハルダーが「現実と妄想の区別がつかなくなっている」とモーリスに訴えたり、ためらいながらもナチス式敬礼をする姿から、これから起きる出来事の不穏さを予感させた。 フォトコール前に行われた会見には佐藤のほか、萩原、野波、藤野涼子、北川拓実、那須が登壇した。今回の上演版の見どころを尋ねられた佐藤は「生バンドが舞台にいることが強み。舞台上がまるでハルダーの頭の中を描いているかのように、音楽がハルダーに寄り添っていると感じられるのでは。生演奏によって物語がお客様に届きやすくなると思うし、生の演劇の力を感じられます」と回答。 また佐藤は本作について「重い題材を扱っていますが、ストーリーは軽やかに進みます。人間のおかしさ、愚かさが描かれているので、どんな人でも共感できるところがあるはず」と語り、さらに佐藤は「お客様に豊かな時間を届けられるように精一杯がんばります!」と意気込んだ。 萩原は「演出するのも演じるのも観劇するのも大変な作品かもしれないけど、素敵なカンパニーでこの作品に挑戦できた。とにかく“ハルダー”佐藤隆太が作品の大部分を背負ってくれています」と述べる。また劇中で歌うことについて萩原が「『僕の歌を楽しみにしていて』とは、口が裂けても言えない」と恐縮すると、佐藤がすかさず「僕はすごく楽しみですよ!!」と続け、一同を和ませた。 野波は「演出の長塚さんも共演者の皆さんもとてもチャーミングな方ばかり。稽古場ではギュギュッと濃い、幸せな時間を過ごしました」と稽古の充実ぶりをのぞかせ、「あっという間に初日が近づいてきました。お客様にどう感じてもらえるか楽しみです」と期待を口にする。藤野は「演技に悩んだとき、稽古場で生バンドの演奏を聴いてリフレッシュできた」とエピソードを明かし、「このカンパニーで楽しく冒険したい」と顔を輝かせる。また藤野が「私は劇中で歌いませんが……」と言うと、佐藤が「俺2つ歌があるから1個いる!?」と茶々を入れて笑いを誘った。 「僕にとって挑戦となる作品」と言葉に力を込める北川は「挑戦したことがないジャンルの曲を歌います。苦戦したけど、毎日バランスボールでお腹を鍛え、良い声を出せるように備えてきました」と手応えを語る。那須は「稽古場が隆太さんの明るいエネルギーに包まれていた」と笑顔を浮かべ、「台本をもらったとき、『これは大変な作品だ』と思いましたが、稽古するうちに印象が変わった。テーマは重いけど、楽しさもある舞台です。お客様を迎えて作品が成長するのが楽しみ」とコメントした。 上演時間は休憩15分を含む約3時間。東京公演は4月21日まで行われ、その後27・28日に兵庫・兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホールで上演される。 ■ 「『GOOD』-善き人-」 2024年4月6日(土)~21日(日) 東京都 世田谷パブリックシアター 2024年4月27日(土)・28日(日) 兵庫県 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール 作:C.Pテイラー 演出:長塚圭史 出演:佐藤隆太、萩原聖人、野波麻帆、藤野涼子、北川拓実、佐々木春香、金子岳憲、片岡正二郎、大堀こういち、那須佐代子