仙台市地下鉄南北線の利用回復に遅れ 23年度、コロナ禍前比4%減 深夜2割減の理由は?
新型コロナウイルス感染症の流行から2025年で5年となる中、仙台市地下鉄南北線で利用者数の回復が遅れている。コロナ禍前の水準を超えた東西線とは対照的。背景には、生活様式の変化に加え、沿線人口や市街地再開発が影響しているとみられる。市交通局はアンケートで現状と課題を把握し、利用拡大策を検討する考え。(せんだい情報部・藤原佳那) 【図表】南北線と東西線の1日平均利用者数の推移 南北線、東西線の1日平均利用者数(全日)の年間推移はグラフの通り。コロナ禍が始まった20年度はいずれも19年度より2割以上落ち込んだが、持ち直しの上昇カーブが異なる。 南北線は23年度で18万7000人。前年度を8%上回ったものの、19年度を4%下回った。東西線は8万2900人で、前年度より10%増え、19年度比でも4%増となった。南北線の24年4~11月の1日平均(全日)は15万3000人で、19年度同期の16万300人になお届いていない。 駅別で19年度同期より減ったのは13駅で、1割以上の減少率となったのは泉中央駅が13%、八乙女駅11%、広瀬通駅10%。増えたのは3駅で、増加率は五橋駅が22%、富沢駅6%、北四番丁駅4%の順だった。 五橋駅は東北学院大のキャンパス移転(2023年)、北四番丁駅は近くの東北大農学部雨宮キャンパス跡地への仙台厚生病院の移転(24年)、周辺のマンション建設が変動を招いたとの見方がある。 昨年11月平日の時間帯別利用者数を19年11月と比べた増減率は表の通り。通勤通学の利用客が多い平日の朝と夕方は、東西線の増加率が1割を超えたが、南北線は微減。他の時間帯でも、コロナ禍による「飲みニケーション」の退潮もあるのか、特に深夜の減少率が20%に達した。 市地下鉄沿線まちづくり課によると、23年の沿線人口の伸び率は14年比で東西線の12%に対し、南北線は4%にとどまる。15年に開業した東西線エリアにはマンションやオフィスビル、大型商業施設の整備が進む。南北線は開業から37年たち、成熟した市街地が広がる。 市交通局の千葉義樹営業課長は「南北線沿線は開発の余地が少ないため、マンション建設の動きなど注視しながら、新規利用者を取り込む必要がある」と説明。市全体の人口減少も見据え「交流人口の拡大やインバウンド(訪日客)の利用促進など他部局と連携しながら需要を掘り起こしたい」と話す。 市交通局は新たな需要喚起策を探るため、25年2~3月にアンケートを行う。地下鉄の利用頻度や目的別の移動手段、改善点などを尋ねる。結果は25年度末までに見直す市交通事業経営計画に反映させる方針。
河北新報