サラヤはなぜボルネオの環境問題に取り組むのか:パーム油の問題を世界に発信
■ 森林破壊を目にし、思いを新たに
――サラヤ社員はボルネオ視察に行かれることも多いそうですが、何が印象に残っていますか。 肥田:コロナ禍もあり、私は2023年に初めてボルネオに行くことができました。実際に熱帯雨林に行くと、背が高い木や低い木、さまざまな植物が目に飛び込んできて、その力強さに圧倒されました。 空港から車で移動している間、アブラヤシのプランテーションが延々と続くのですが、熱帯雨林とは対照的で、とても人工的な風景に感じました。人間の都合で住みかを奪われ、保護されたゾウにも出合いました。 こうした熱帯雨林や野生生物を前に、絶対にここを守らなければならないという思いを新たにしました。同時に、パーム油産業で働き、生計を立てている現地の人たちの暮らしも理解できました。 貴重なボルネオの生物多様性の保全と、持続可能なパーム油産業の両立は世界的な課題です。 パーム油を使う企業にとどまらず、パーム油を使った食べ物を食べたり、洗剤を使ったりする消費者にも、こうした問題を知ってもらうことは、私たちの大事な仕事であると実感しました。 「ハッピーエレファント」シリーズの売り上げの1%は、ボルネオの環境保全活動に寄付されます。メーカーとしては大きな決断なのですが、ボルネオの現状を知る社員も多いので、その重要性を共通認識として持てていることは当社の強みだと感じています。
■ ボルネオの問題を世界で共有したい
――寄付付き商品の展開など、消費者を巻き込む仕組みづくりはサラヤの特徴ですね。 廣岡:ボルネオの問題を知り、「植物性であれば環境に良い」と、単純には言えないことを実感しました。ボルネオの問題は、日本だけではなく、世界中のみんなで共有しなければならない大きな問題です。「ハッピーエレファント」シリーズは、こうした問題を世界に訴求するために、世界展開を視野に入れて開発されました。 世界にはさまざまな環境配慮型の商品やブランドがありますが、その多くはワンウェイ(一方通行)です。 「ハッピーエレファント」シリーズは生分解性が高く、排水は微生物によって、水とCO2(二酸化炭素)に素早く分解されます。発生したCO2は植物の成長過程で吸収されますから、森づくりが重要なのです。これらはすべてつながっています。 サラヤは世界でいち早く天然の界面活性剤を製品化し、循環モデルを構築しました。 まだまだベストな商品だとは思っていませんが、「ハッピーエレファント」シリーズが、世界の人たちにとって、環境について考えるきっかけになればと思います。ユーザーが増えれば増えるほど、ボルネオの問題が改善するスピードは早くなりますので、より多くの人に使っていただきたいです。 肥田:「環境に良い商品」と「環境に悪い商品」、どちらを使いたいかと聞かれたら、皆さん「環境に良い商品」と答えると思います。一方で、「環境のために何かしたい」と思っていても、何から始めれば良いか分からない人も多いのではないでしょうか。 「ハッピーエレファント」シリーズのような日用品を環境配慮型に変えることは、環境への取り組みの第一歩といえます。メーカーとしては、洗浄力や使い心地など、お客様の暮らしも大切にしながら、環境活動ができるということを伝えていきたいです。