水が無くなる神秘の池とは!? 乗鞍山麓「五色ヶ原」でキャンプ+トレッキング【後編】
平湯温泉キャンプ場をベースとして、「乗鞍山麓五色ヶ原の森」で楽しむトレッキングコースの後編です。 【写真】神秘的な「五色ヶ原」トレッキングの行程を見る(全11枚) 折り返し地点となる神秘的な池「雌池」から、今度はこのコースのハイライトである「布引滝」を目指します。
謎めいた一年を繰り返す神秘の池
こんなに満々と水をたたえた池が春には水のない状態になるとはちょっと信じがたいのですが、春から夏にかけてここは一面の草地になるのだとか。 雪解けの時期も、梅雨も関係ないそうで、渇水期と満水期が規則的に繰り返されるそうです。渇水期には、池の底に「オオアゼスゲ」という植物が一面に茂り、独特の景観となるそう。そして、夏になるとどこからともなく水がしみ出してきて、秋にかけてはこのような状態に。水がない時期に、また見に来てみたいものです。 このエリアは、乗鞍の山麓を形成する溶岩台地の一部で、火山から流出した溶岩の上にできた森。亜高山に近い寒冷地でもあり、植物にとっては、なかなか厳しい環境だそうですが、けっこういろいろな植物が生育しています。夏に白い清楚な花を咲かせるゴゼンタチバナが、可愛らしい赤い実をつけていました。
五色ヶ原の森をはぐくんだ「ゴスワラ」とは
五色ヶ原がある付近には、ごろごろとした独特の岩がたくさんあります。これらは、火山活動で流出してきた溶岩が斜面を流れ下りながら冷えて固まり、ブロック状の岩となったものだそうです。岩がゴロゴロとした独特の地形になっていて、これを地元の人たちは「ゴスワラ」と呼んでいます。 ゴスワラでは、有機質を含んだ土壌がほとんどないため、樹木の生育にはあまり適していません。岩の表面にコケが生え、そのコケを土の代わりとして樹木が根を張り、やがて岩をかかえこむように育っていくのだそうです。植物の生命力に圧倒されます。
いよいよ本コースのハイライト「布引滝」へ お目当ての布引滝を目指して往路を戻ります。一度歩いた道も、逆向きに歩くと見えるものが違って、案外楽しいものでした。 ハイライトの布引滝は、出合い小屋から少し川の方へ進んだ展望台から見えます。 巨大な岩壁に、たくさんの白糸や布を垂らしたかのような独特の姿で、水音ともあいまって、圧倒されるような存在感があります。 溶岩台地の崖から流れ出しているのですが、この滝の上流に大きな川は存在せず、この部分で大量の伏流水があふれ出して滝になっているのだそうです。今まで見たことのない、とても不思議な滝です。 滝の下へ向かって急な登山道を下っていきます。 滝壺まででると、見上げるような絶壁が扇風のように頭上に広がっています。 流れ落ちているのが伏流水のため、年間を通じて水量が安定しており、滝の周辺の岩は緑鮮やかなコケに覆われています。無数の岩の間を絶えることなく滝水が流れ落ちていて、岩の連なりが、まるで石仏のように見えたことから、古くは「小仏滝」と呼ばれたそうです。 布引滝の左側に、もう一つの滝「横手滝」が流れ落ちているのです。この滝の前にはつり橋がかけられており、対岸へ渡れます。 落差約15mの横手滝。優美に流れ落ちる布引滝とは対照的に、力強い水量で迫力があります。目の前のつり橋を通ると、ひんやりとした風が流れてきて、水圧の強さを実感できます。 木々が出すフィトンチッドと、滝から発生するマイナスイオンのパワーで、癒し効果も抜群。とても気持ちのいいトレッキングでした。 今回参加したのは、半日足らずのショートコースですが、単なる山歩きではなく、知識豊富なガイドさんの話を聞きながら森を眺めるという体験は、学びも多く、満足度の高い時間となりました。 「乗鞍山麓五色ヶ原の森」は、一日かけて歩くロングコースが3コース、半日で楽しめるショートコースも3コース。ツアー終了後に、ほかのコースも全て制覇してみたいと思ったのは私だけではないはず……。違う季節にも、ぜひ訪れてみたいものです。
根岸真理