ディーゼルから客車まで JR新大阪駅近くの車両基地へ
トゲトゲが付いた「建築限界測定車」
検修場の中に、いかにも古めかしい客車が2両いた。手前の車両には何やらトゲトゲがついている。 「こいつは『建築限界測定車』て言います。新しい路線や駅ができた時なんかにこいつを走らせて、車両とぶつかる位置に電柱とかホームとかが造られてないかチェックするんです。今は畳まれてるあのトゲトゲ、矢羽根っちゅうんですけど、あれを広げて走らせて、もし何かと接触したら車内でランプが点く。そしたらその場所を記録して、後でぶつかった建築物を修正するんです」 矢羽根を広げた姿がかんざしを挿した花魁に似ていることから「オイラン車」とも呼ばれている。「けど最近はこいつが走ることもめったにないですわ。最後に仕事したんは4年くらい前かなあ」
マイテ49という展望車「マイテ」の意味は?
その奥にいたのは、展望デッキのついた見るからに豪華な車両。マイテ49という展望車で、「マ」は車両の重さ、「イ」はかつての一等車、「テ」は展望車を表す記号だ。戦前に作られ、東京と九州を結ぶ特急「富士」に使用。一度は廃車になったものの、国鉄がJRになった時にイベント列車用として復活した。 「こいつも最近は全然走ってませんわ。それでも、いつ走らせることになるかわからんから、こうやって屋根の下で大事にしてます」確かに、製造から80~75年以上が経つ車両とは思えないほど整備が行き届いていた。 客車検修場の東側、一番新大阪駅寄りにあるのが客車の留置線。整備中だった「トワイライト」の電源車に、特別に乗せていただいた。防音仕様の重たい扉を開けると、耳をつんざくような轟音が押し寄せてくる。 「車内で使う電気を作るのが、この電源車です。設備が豪華やから電気も食うので、トワイライトはエンジンを2台回して発電してます。1台は空調用、もう1台は照明などそれ以外用で、エンジンをかける順番で機械が自動的に振り分ける。片方のエンジンの負荷が増えると、自動的にもう1台のエンジンへ分担するようになってます。人間と一緒で、1人がフルパワーで活躍するより2人で協力したほうが効率ええからね」