若手が育っていないと感じる管理職は8割…過ごしてきた環境の違いが上司と若手のわかりあえなさを生んだに過ぎない事実
若手の不安や焦りは単なる〝青い鳥症候群〞か〝具体的不安″か
若手のほとんどは多かれ少なかれ不安や焦りを感じている。 ただその不安や焦りが〝モヤモヤとしたもの〞なのか、それとも〝具体的なものなのか〞という点で相違がある。 前者では、周りがホップステップしているように感じる、SNSでキャリアアップ転職した友人がいる、そういった情報が様々な媒体から否応なく入ってくるなかで、「自分は大丈夫なのか、大丈夫なはず、でも……」と思う心の揺らぎとも言える。選択の回数が多くなる職業社会で、そう感じさせられる接点が増えているのだ。 後者は、社内外で何か行動をしたうえで自分に足りないものが見えてきた、そういった「このままでは自分は〝何者か〞になれない」という不安や焦りである。少し動いた結果としてより自分の状況が俯瞰して見えてしまった結果、生じた気持ちだ。 若手の不安や焦りが、単なる〝青い鳥症候群〞なのかそれとも行動に立脚した具体的不安なのかは相対する際の重要な視点だ。ただ、職場の上司がざっくり聞けば「めちゃくちゃ満足しています!」とか「不満は特にないです」とかで流されてしまう(満足―不満足と安心―不安はそもそも別の問題だ)。 事実、筆者が企業で管理職研修を実施した際に「部下の若手の不満の声を聞けていますか」と聞くと、多くの会社で4~5割の管理職の方が手を挙げるのに対して、「部下の若手の不安の声を聞けていますか」と聞くと1~2割しか挙がらない。 満足していても不安や焦りを抱えているかもという発想が乏しいかもしれないし、同時に通常の上司―部下関係や単なる1on1ではそこまで掘り下げて聞くことが難しいのだ。
会社の仕事に対する気持ち
若手において一人ひとりが最も異なるのがこの点かもしれず、もしかすると同じ会社にいる若手でもその会社の仕事の〝大変さ〞に対する気持ちが全く異なるのかもしれないと感じている。その気持ちを左右しているのは、入社前の社会的経験の程度であったり、自分の身の回りの友人・知人の動向であったりする。 学校にいながらにして社会的経験をする場が、キャリア教育やインターンシップの浸透で広がった結果として、その質にも差が生じている。 筆者は若者のキャリアや活動全般に学歴や経歴に関係なく関心を持って研究しているが、正直に言って現代の若者が学生時代に実行しているアクションのなかには、単なる〝ガクチカ〞(学生時代に力を入れたことを就活の採用面接で聞くことが多く、その略語。就活用語)で済ませるのは非常にもったいないものが存在している。 そのもったいなさは若者にとってのもったいなさでもあるが、同時に企業にとってもだ。ベンチャー企業でプロジェクトマネジャーをしていた経験がある事業領域がある新入社員に、なぜその領域で挑戦をさせてみないのか。挑戦させて挫折する経験をさせるチャンスなのに、なぜ無理に通常のローテーションに組み入れようとするのか。単なる〝ガクチカ〞だと理解してしまっているからだ。だから人事の採用担当から配属先に情報共有もしっかりされないのだ(もしくはされていても配属先の上司がたいして読んでいないのだ)。 まずは、単なる就活の材料として考えていい経験と、そうでない経験もあるということを認識していただきたい。その違いによって、会社の仕事の見え方が若手であっても全然違うという状況が顕在化しているのだ。