知的障害があっても芸能人になれる? 「挑戦できる場つくりたい」専門事務所が相次ぎ登場
「彼らの世界観を理解し、必要な点を配慮すれば、『これこそがエンターテインメントだ』というすごい演技ができる」と田中さん。「芸能界はその人の魅力を売り物にする世界。障害という特性を生かすのが悪いこととは思わない」と話す。 所属タレントの1人、小籔伸也さん(29)は中学生のとき、学校に行くのがつらくなり、「毎日の出来事をドラマだと思うようにしていたら、気持ちが楽になった」。それが芝居に興味を持ったきっかけだ。 その後、軽度の知的障害と発達障害があることが判明。今はアルバイトをしながら、アヴニールで演技のレッスンやボイストレーニングなどに励む。学園ドラマに出演するのが目標で、「『諦めの悪い俳優』になりたい」と話す。 ▽共演の役者たちに相乗効果 一般の芸能事務所が手がける例もある。俳優の小西真奈美さんらが所属する「エレメンツ」(東京)は、社内のプロジェクトとして、ダウン症がある人の舞台出演やダンス活動を支援している。
事業を始めたのは10年ほど前。「ダウン症の人たちが挑戦できる場があまりにも少ない。可能性を広げられる挑戦の場を作ろう」との思いからだった。 2021年の東京パラリンピックやダイバーシティー(多様性)を重んじる社会の流れが追い風となり、テレビへの出演機会などはここ数年増えてきているという。 取締役の馬場巧さん(48)はこう話す。「彼らは共演陣やスタッフに分け隔てなくハグしたりするので、現場全体で自然とコミュニケーションが生まれる。彼らの真剣な姿勢や成長する様子を見て、共演する役者たちが刺激を受ける相乗効果もある」 ▽福祉や慈善活動ではない どの事務所も共通して話すのは「福祉や慈善でやっているわけではない」ということだ。所属タレントの起用には出演料を求める。ただ、事業の採算という点ではいずれも苦労しており、芸能活動だけで生計を立てている人はいない。 制作サイドには「どう接すればいいのか分からない」という戸惑いがあり、視聴者の中には障害者を「かわいそう」と見る人もいる。企業は「『障害者をお金もうけに使っている』と批判されそう」と“炎上”リスクを恐れて、起用に二の足を踏むケースが多いという。