宝富士（右）は北の若をはたきこみで破った＝両国国技館（福島範和撮影）

〇宝富士（はたき込み）●北の若（秋場所4日目） 通算連続出場回数で歴代10傑入りしたことを宝富士は知らなかった。取組後に報道陣から伝えられると、「10位は大したことない。1位（1632回の玉鷲）がいるんで、どうしてもかすんじゃう」と謙遜したが、立派な記録である。初土俵以来、15年半に渡って休むことなく1297回も土俵に立ち続け、10位の飛騨乃花に並んだ。 出場記録に意識が向かなかったのは、この日が英莉乃夫人との結婚7周年の記念日だったから。「（結婚記念日は）気合が空回りして負けることが多い」。悔しい過去があったからだろう。今年は非常に落ち着いていた。北の若の動きをよく見ながら前へと圧力をかけ続け、タイミング良くはたき込み。37歳のベテランは14歳若い相手を元気な相撲で下した。 もちろん、これだけ長く現役を続けていれば、20代の頃のようにはいかない。今場所は腰の状態が万全でなく、まわしの締め方を変えているという。「以前はきつく巻いていたけど、それでは腰が下りなくなってきた。緩めにしたら腰が下りて動きやすい気がする」。この工夫に加え、腰に負担を掛けないよう積極的に攻める意識も高まって、2日目から3連勝だ。 「今日は結婚記念日だったので何としても勝って懸賞金を持って帰りたかった。おいしいものを食べます。8度目（の記念日）は現役でいるかな？」 柔らかい表情で懸賞2本を手にし、夫人がハンドルを握る迎えの車に向かった。（宝田将志）