中国3大新興EVメーカーは本当に儲かっているのか?赤字続きの裏に隠れた「潜在力」の読み解き方
● 中国3大新興EVメーカー 過去5年間ほとんど赤字の裏側 下の表は中国の主要EV(Electric Vehicle、電気自動車)メーカーの営業利益の推移を示しています。営業利益は、売り上げから売上原価と販管費(研究開発費を含む)を差し引いて計算され、本業からの儲けを表していると言われています。 【この記事の画像を見る】 BYD(比亜迪股份有限公司)は、ご存じのようにバッテリーメーカーから始まり、その後にEVを作り始めて、現在ではハイブリッド車も作っています。今やテスラを抜いて世界一のEVメーカーになりました。毎年売り上げを増やし、営業利益も増えています。2023年度は324億元(約6840億円)の営業利益です。儲かっていると判断して良いでしょう。 あとの3社は、中国3大新興EVメーカーと言われているLi Auto(理想汽車)、Nio(上海蔚来汽車)、XPENG(小鵬汽車)です。過去5年間の営業利益はほとんど赤字で、儲かっていないように見えます。その中でLi AutoはEVメーカーとして昨年ようやく営業利益が出ました。 このデーターを見れば多くの人は3社が儲かっていないと判断するでしょう。また、このままでは倒産するのではないかと予測するでしょう。しかし、実はこの5年間だけでは本当に儲かるかどうかはわからないのです。 一般的に利益あるいは損失と言っているのは、1年間の企業活動に対する期間利益(あるいは期間損失)のことです。儲かっているかどうかを考える上で大事なことは、その企業の事業プロジェクトはどういうものかということを理解した上で、期間利益(あるいは損失)の意味を考えることです。
● 「本当の儲け」はどうなっている? 事業プロジェクトと期間利益との関係 簡単な例を使って、期間利益に関する基本的なお話をしましょう。ある自動車メーカーが工場に10億円投資して4年間EVを作るプロジェクトを企画しました。一台の価格は100万円で材料費は50万円です。4年間で4000台売れました。さて、いくら儲かったでしょう。 ・4年間の売り上げ(収入):40億円(100万円×4000台) ・4年間の費用(支出):30億円(工場10億円+材料代20億円[50万円×4000台]) ・4年間の儲け:10億円(40億円-30億円) この10億円は4年間の儲けであり、収入支出の差額として10億円分の現金が増えたということを意味しています。 それでは、1年目、2年目、3年目、4年目のそれぞれ1年間の利益がいくらかを考えましょう。毎年1000台作ってそれが全部売れたとします。また、最初に工場に投資した10億円は4年間で均等に費用化(減価償却)したとします。 ・1年間の売り上げ:10億円=100万円×1000台 ・1年間の費用:7億5000万円=工場の減価償却費2億5000万円+材料代5億円(50万円×1000台) ・1年間の期間利益:2億5000万円=10億円-7億5000万円 ・1年目から4年目まで毎年2億5000万円の期間利益が計上されて、4年間での儲けは10億円です。 ここまでのお話で理解してほしいことは、本当の儲けとはプロジェクト全体で計算されるべきものであり、期間利益はその一部であるということです。その観点から言えば、この企業は1年目、2年目で2億5000万円の利益をあげていますが、儲かってはいません。3年目から儲かり始めるのです(その理由は本稿を読み進むとわかります)。このことをしっかり理解してもらうために、これまでの例を少々変えて考えてみましょう。