意外に多い「元球児」の有名人たち

夏の甲子園出場をかけた地方予選もたけなわ。連日、球児たちが熱い闘いを繰り広げているが、現在、野球以外の分野で活躍中の有名人にも、かつて高校球児として甲子園を目指した者が少なくない。【久保田龍雄/ライター】 【写真を見る】歴史的瞬間！　宇宙飛行士の「元球児」が宇宙から始球式する様子 ***

球児だった北村弁護士が、何度も夢に見た“悔しいプレー”

　人気テレビ番組「行列のできる法律相談所」に史上最強の弁護士軍団の一人としてレギュラー出演し、“笑わない弁護士”と呼ばれた北村晴男氏も、長野高時代は野球部に在籍し、高校最後の夏は1番セカンドとしてプレーした。 　1973年夏の長野大会は、強打の捕手・堀場秀孝（元広島など）を擁し、夏春夏の3季連続甲子園を狙う丸子実（現・丸子修学館）が大本命ながら、“全員野球”の長野高もダークホース的存在だった。 　だが、初戦（2回戦）の上田城南（現・上田西）戦は8回まで2対3とリードされ、9回裏1死二、三塁のチャンスも、次打者が投飛に倒れ、「あと1人」まで追い込まれた。 　そして、9番打者のエースが死球を受け、2死満塁で、1番・北村晴（※チームには同姓の捕手がいた）に打順が回ってきた。 　ここまで4打数無安打に抑えられていた北村晴だったが、思いがけず冒頭で3対3の同点に追いつくと、なおも2死二、三塁のチャンスに、フルカウントまで粘ったあと、左前一直線の快打を放ち、見事逆転サヨナラ勝ちのヒーローになった。 　北村晴は3回戦の須坂園芸戦でも、1点リードの8回に2点タイムリー二塁打を放つなど、2試合続けて勝利に貢献。4回戦の野沢北戦では、2試合で被安打わずか5の好投手・黒沢章仁を、“待球戦法”（意図的にファウルを打って相手投手の球数を増やす戦法）を駆使して12四球などで攻略し、8強へ。 　準々決勝の長野工戦も5回まで3対0と優勢だったが、6回に一挙4点を失い、5対7の逆転負け。4回1死一、二塁、北村晴の左前安打で本塁を突いた二塁走者が好返球でタッチアウトになったプレーが惜しまれた。 　また、9回裏無死一塁の反撃機に、前の打者がフルカウントから明らかにボールとわかる球でストライクを取られ、三振したことで、冷静さを欠いてしまい、直後の打席で頭を整理できないまま中直に倒れたことを悔やみ、「それから10年間、あの場面を何度も夢に見ました」と回想する（2020年2月13日付・産経新聞）。 　甲子園には届かなかったが、桐光学園に入学した長男が2001年春、2002年夏と2度甲子園に出場し、親子2代で夢を叶えている。