大阪万博で空飛ぶクルマは本当に飛ぶのか?開発は「ギリギリ」の状況、「実用化は限定的」でドローン業界に淘汰の波
■ 空飛ぶクルマ、なぜいま必要? 一方、事業性を考慮したユースケースの確立と、それを実現するための機体技術の開発については、業界関係者の当初予定よりかなり遅れている印象がある。または、想定したユースケースを実現することは難しいと思われる場合もある。 筆者は、1987年に米カリフォルニア州でFAA(連邦航空局)の双発自家用機操縦免許を取得した後、これまで世界各地で様々な新しい「空飛ぶ乗り物」を取材してきた。 だが、その多くが構想段階で終わってしまったり、社会実証のめどがついても運用資金がショートして企業が解散してしまったり、数多くの失敗事例を目の当たりにしてきた。 2010年代に入ると、小型の垂直離着陸機「ドローン」の社会実装が一気に進み、それに伴い「人も飛べるドローン」という発想で、様々なベンチャー企業が登場するようになった。 新規参入が増えた背景には、高度な設計を比較的廉価で行える演算装置の普及や、空中での姿勢制御を行う演算装置の発達、またリチウムイオン電池の技術革新などが挙げられるだろう。 ただ、「なぜこのタイミングで、空飛ぶクルマが世の中に必要なのか?」というそもそも論については、80年代~2000年代に空飛ぶクルマの実現を「夢見た人たち」と最近の機体開発やサービス開発企業とは、大差ないようにも感じる。 開発現場の声をいくつか紹介しよう。
■ 「完全な電動化は難しい」 6月頭に開催された「空飛ぶクルマ」やドローンに関する展示会「Japan Drone/ 次世代エアモビリティEXPO 2024」(2024年6月5日~7日、千葉県幕張メッセ)を取材し、各方面の人たちと意見交換してみた。 まず、「空飛ぶクルマ」については「ユースケースは限定的」という声が少なくなかった。 国が示すユースケースとしては、災害など有事における救急搬送や人命救助、都市部での「空飛ぶタクシー」、過疎地などでの物流などがあるが、会場内では「遊覧飛行が最も現実的」という意見が複数あった。 技術面では、「完全な電動化は難しい」という声が多かった。 ネックとなるのは、やはり電池のエネルギー密度である。 自動車の電動化でも量産されている現在のリチウムイオン電池では、一定以上の航続距離を確保するためにはかなりの電池容量を必要とする。だが、たくさん電池を積むことによる重量増は飛行にとってネガティブ要因になってしまう。この「そもそも論」からいまだに抜け出せていない印象がある。 例えば、固定翼を併用する機体ならば、垂直方向への飛行のみ電動モーターを稼働し、上空では比較的少ない推進力で滑空できるという解釈がある。だが、少なくとも日本国内では実機を用いた実証実験における詳しいデータが開示されていない状況だ。