墓石の需要は減少の一途…存続危ぶまれる石材店が“石の食器”で打開へ 若き4代目が活かした端材と職人の技
愛知県岡崎市の石材店が考案した「石の食器」が、国内外から注文が集まる人気となっています。考案のきっかけは、ニーズが減り続ける石材への若き4代目の危機感でした。 【動画で見る】墓石の需要は減少の一途…存続危ぶまれる石材店が“石の食器”で打開へ 若き4代目が活かした端材と職人の技
■高級な石材で作った美しく重厚感のある器 使うのは「端材」
赤いトマトソースのパスタが映える、漆黒の食器。墓石に使われている石と同じ石材を使って作られています。御影石や大理石といった高級石材をオシャレに加工し、様々な用途に合わせて考案しています。
考案したのは、100軒程の石材店が集まる愛知県岡崎市の石工(せっこう)団地にある「稲垣石材店」。1927年に創業した老舗です。
地元で採掘される花崗岩(かこうがん)などを使った石像作りから始め、今は灯篭や墓石など幅広い商品を製造・販売しています。
医療機器メーカーの営業を経て7年前、4代目として家業に入ったのが稲垣遼太さん(32)です。
今は、墓もコンピューターを使ってデザインする時代になっていますが、最近ではニーズがどんどん減ってきているといいます。 稲垣石材店の4代目 稲垣遼太さん: 「最盛期は(石工団地に石材店が)350軒あった。最盛期に比べたら3分の1以下。不安というかなんとかしなきゃなという思い」 石材店の存続は危ぶまれる状況にあり、石を使った新たな商品ができないかと、時代の流れにも合った「端材」に着目しました。
稲垣さん 「石は腐らないので置いておいてもたまってしまうので、場所の整理も含めて処分することはありました。素材自体は1級品の御影石なので、それを小さくても職人が加工すれば新しい器に生まれ変わらせてあげられる」
■美しい丸みに必要な職人の高い技術
稲垣さんは端材を利用した石の食器を、この道30年のベテラン石工職人、井上浩二さん(53)の力を借りて開発を始めました。
端材の角をとり、美しい丸みのある器。簡単そうに見えますが、高度な職人技が必要です。
石工職人の井上浩二さん: 「サイズ感が手のひらサイズなので、細かい作業でも繊細さが要求される。グラインダー(切削の工具)で削っていくんですけど、これは固定した状態であとは自分の力加減で回しながら削っていく」 作業はフリーハンドで、手の感覚だけを頼りに石を丸く削っていきます。「石の食器」は、職人の高い技術があってこそ作り出すことができます。