事業承継は「単なる経営者交代」ではない…企業が内包する価値・成長力・人的資源を引き継ぐ方法
日本の中小企業が抱える、事業承継という大問題。しかし、事業承継は経営者が交代すれば終了といった単純なものではなく、次世代へ引き継ぐべき資産には、さまざまなものがあります。今回は、事業承継において重要な事業価値源泉の把握と企業価値評価について取り上げます。メガバンク出身で、多くの企業の事業承継をサポートしてきた公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。 【早見表】年金に頼らず「夫婦で100歳まで生きる」ための貯蓄額
単なる経営者の交代ではない…事業承継の「本当の目的」とは
事業承継の目的は、単に経営者の交代を超え、「事業の長期的な存続」と「成長」を目指すことにあります。後継者には、事業価値の根源を活用し、環境変化に適応する能力が求められます。経営戦略は、将来の事業目標と現状のギャップを埋めるための長期的な計画です。環境の変化に対応することが、事業の長期運営には不可欠です。 経営戦略は大きく分けて「企業戦略」「競争戦略」「機能要素別戦略」の3つに分類されます。企業戦略は、全社的な視点から事業領域や資源の配分を考えます。競争戦略は、特定の事業でライバルに勝つための戦略です。機能要素別戦略では、職能ごとに、具体的な戦略が策定されます。 企業は、外部環境と相互に影響し合うオープンシステムとして機能します。そのため、外部環境の変化に敏感である必要があります。経営環境は、マクロ環境とミクロ環境に分けられ、それぞれが企業に異なる影響を与えます。マクロ環境では、政治、経済、社会、技術などの要因が、企業戦略に影響を及ぼします。ミクロ環境は、企業が直接競争する市場環境を指し、競合他社や顧客、仕入れ先との関係が重要になります。 経営戦略を策定する際には、3C分析やSWOT分析、ファイブ・フォース分析などの手法が用いられます。これらの分析を通じて、企業は自身の強みと弱み、外部環境の機会と脅威を把握し、戦略を練ります。 経営資源には、人的、物的、資金的、情報的資源があり、これらは企業の重要な構成要素です。とくに、人的資源は個々の価値観や感情を持つため、適切なマネジメントが求められます。物的資源、資金的資源、情報的資源も、それぞれが企業戦略において重要な役割を果たします。 市場から容易に調達できる資源と、そうでない資源があり、後者は企業特有の強みを形成し、競争上の優位性を生み出します。特に、ファミリービジネスに見られるような、伝統や文化、ブランドなどの見えざる資産は、事業承継を通じて培われ、長期的な競争力の源泉となり得ます。 後継者は、これらの戦略的視点を持ち、事業価値を最大化するための活動を行う必要があります。
【関連記事】
- 同窓会で始まる「地獄のマウント合戦」…敗北感なく、一線を画してスマートにかわす必殺技
- 世帯年収1,700万円の40代勝ち組夫婦、1億円の「豊洲タワマン」に住んで大後悔…中国人の爆買いで中国系キッズがSAPIX上位クラスを席巻。日本人が受験戦争に完敗のワケ
- 投資初心者が「新NISA」をはじめるなら…“決してマネしてはいけない”専門家の投資手法【CFPが解説】
- 「定年まで働くぞ」年収550万円、会社に尽くした65歳男性の後悔…「64歳11ヵ月」で退職した年収400万円の同期を羨んだワケ【CFPが解説】
- 世帯年収1,600万円の30代・パワーカップル…ペアローンで「1億円のタワマン」を購入した驚愕の結果【FPが解説】