金銭面でも設備の面でもハードルは大きく低下! 今こそ会社員も「多拠点ライフ」を実現すべき理由
<「いくつもの選択肢を持つ」ことが強みになる...多拠点生活の実践者・石山アンジュさんが語る「多拠点ライフ」の気軽な始め方>
これからの時代は「分散する生き方」がスタンダードになっていく──。「分散する生き方」とは、家や仕事やコミュニティを複数同時に持つ「多拠点ライフ」を意味します。その可能性や多拠点ライフをはじめるためのヒントが詰まった一冊が、『多拠点ライフ』(クロスメディア・パブリッシング)です。 【図表】世界の移住したい国人気ランキング、日本は2位、1位は? 著者は、日本のシェアリングエコノミーの第一人者で、自身も多拠点生活の実践者である石山アンジュさん。会社員でも「分散する生き方」を実践するための一歩とは?(※この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です) ■「積み上げる」思考から、「分散する」思考へ ──石山さんが『多拠点ライフ』を執筆された動機は何でしたか。 世の中の不確実性が高まるなかで、私たちは常にリスクと共存する時代を生きています。そこに生きづらさを感じる人も増えるなか、「自分たちらしく、豊かに生きていける選択肢」を伝えたいという思いから、本書を執筆しました。都会と田舎を行き来する二拠点ライフ、仕事と休暇を組み合わせたワーケーションなど、「多拠点ライフ」の事例を数多く紹介したのもそのためです。 ──「分散する生き方」がこれから重要になる背景とは何でしょうか。 これまでの社会は、GDPの成長を前提に、キャリアや資産を積み上げていく「積み上がる」思考を前提にしていました。しかし現在は、自然災害や戦争、感染症など、社会の機能が一瞬で崩壊する有事がいつ起きてもおかしくありません。こうした状況では、安定の概念が180度変わります。事業も資産も1つに依存することがリスクになるのです。 これから大事なのは、「積み上がる」思考から「分散する」思考へと転換すること。そして、家や仕事やコミュニティを複数同時に持つ「分散する生き方」を進めていくことです。もし住まいが複数あれば、首都直下地震のようなことが起きても、他の拠点に住めますよね。同様に、仕事も人間関係も複数の選択肢があれば、変化に対応しやすくなる。それがこれからの安定のステータスではないかと思います。 単に不確実性に対処するだけでなく、住まいや人間関係を分散することで、人とのつながりがより豊かになっていくと考えています。 ■日本の潮流になりつつある「関係人口」「デジタルノマド」の促進 ──分散する生き方に関連して、知っておくとよいトレンドはありますか。 1つは「働き方の変化」です。テレワークの普及や副業解禁、交通費の補助額の値上げ、そしてシェアオフィスの普及などです。 もう1つは、政府が推進する「関係人口」という考え方。関係人口とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域と多様に関わる人々のことです。日本の持続可能性を考えると、移住を促すだけでは日本全体の人口を自治体同士が奪い合ってしまう。そこで政府も、色々な地域に人とお金が流れて持続可能性を担保できる状態をめざすようになりました。 これは世界で起きている潮流で、「デジタルノマド」というライフスタイルが増えています。オンラインで働き各地を旅しながら暮らすデジタルノマドは、世界に3500万人ほど存在し、各国はデジタルノマドビザの発行を解禁しています。従来、海外に住むにはワーキングホリデービザや就業ビザなどが必要でしたが、たとえば、日本企業の仕事を行っているという収入証明を用意すれば、その地域で長期滞在が可能になりました。日本政府もこうしたデジタルノマドを取り込もうとしています。 また、独身の人だけでなく、家族を持つ人も多拠点居住の土壌ができつつあります。その1つが「デュアルスクール」です。現行の学校教育では、自分の住民票を置いている地域の学校に通わないといけません。ですが、いくつかの自治体で、地方と都市の2つの学校の行き来を特例的に認める制度ができています。この動きが進めば、家族でまるごと多拠点生活をするライフスタイルが広がっていくでしょう。