【番記者の視点】ドローで首位陥落の町田 黒田剛監督が「楽をしてしまった」と指摘した攻撃の問題点は
◆明治安田J1リーグ▽第13節 湘南0―0町田(11日・レモンS) 【町田担当・金川誉】町田は湘南と0―0で引き分け、神戸に首位の座を明け渡して2位に後退した。前半は湘南にペースを握られ、GK谷晃生の好セーブもあって耐える展開に。後半は押し返し、U―23日本代表MF平河悠の高速クロスからFWオセフンがネットを揺らしたがVARの末にオフサイドで取り消された。さらに平河の突破から、途中出場したU―23日本代表FW藤尾翔太のヘッドがバーをたたくシーンもつくったが、最後までゴールを割ることはできなかった。 黒田剛監督は、湘南の勢いに押された前半を悔やみ「本来であれば、我々の強みであるセカンドボールの回収率を上げていかなければ。またハードな守備から攻撃につなげていく形がなかなかハマりませんでした」と語った。ハーフタイムには「まだ何もしていない」とゲキを飛ばし、エンジンの再点火を求めた。その一方で、修正を求めたのが「(攻撃が)オセフン一辺倒になりがちな、あまりよくない傾向が出ていた。外回しをしながらも、最終的にセフンに持っていく。または(2トップの相棒)荒木や藤尾をうまく使っていくべき。焦点が(オセフン)ひとつになりがち、というか、楽をしてしまうというかね。そういった思考が見えた」という点だった。 町田の最前線に君臨する194センチFWオセフンは、現在のJ1で“空中戦最強”を誇る。空中戦勝利数は121でリーグトップ(7日時点)。2位の磐田FWペイショットが67であることを見ても、その存在感は絶大だ。後方からのビルドアップでリスクを負わなくとも、オセフンへのロングボールからこぼれ球回収で陣地回復できるシーンは、これまでの試合では多かった。しかしこの日は強風の影響(前半は風上でボールが流れた)と、さらに湘南が勇気を持って最終ラインを高く設定し、オセフンが競った後のセカンドボールへの鋭い反応も見せたため、前半の間に流れを引き戻すことができなかった。 MF仙頭は言う。「相手は僕たちの長所を徹底的に消してくる。今日もセフンの周りは充実させてきた。そうなってきたときに何ができるか」。この日は2トップはオセフンと、藤尾、平河がU―23日本代表で不在の間に結果を残したFW荒木駿太が先発。U―23日本代表FW藤尾が、ベンチスタートから攻撃の圧力をアップさせた。さらに負傷から復帰した昨季のエースFWエリキやオーストラリア代表FWデュークも控える。後半の切り札は多いが、前半から選手間の工夫で流れを押し返すことが理想でもある。 ここまでチームトップの5ゴールを挙げ、守備の貢献度も高いオセフンが前半戦のチームを引っ張ったことは間違いない。さらにオセフンの存在を逆手に取ったビルドアップや攻撃パターンが増えれば、さらに試合を支配する可能性は上がるはずだ。湘南戦も無失点で終え、3試合連続完封で最少失点タイ(10失点)に並び、その堅守は大きな武器となっている町田。しかし実力伯仲のJ1で抜け出すための武器は、やはり多ければ多い方がいい。
報知新聞社