JR東海、静岡空港新駅の対応に変化 鈴木知事とJR社長初面会、否定的→対話姿勢に軟化【リニア問題】
鈴木知事、リニア工事「水確保と生態系保全 堅持」強調
鈴木康友知事は5日、JR東海の丹羽俊介社長と静岡県庁で初めて面会し、静岡県が水資源や自然環境への影響を懸念して着手を認めていないリニア中央新幹線工事の問題について意見を交わした。鈴木知事はリニア事業推進の立場を示しつつ、「大井川の水資源確保と南アルプスの生態系保全の(リニア事業との)両立を図る方向性は堅持する」と述べた。その上で「一つ一つ課題をクリアすることで、プロジェクト推進の道が開ける」とし、県が取りまとめた協議が必要な課題28項目について真摯(しんし)に対応するよう要望した。 面会は非公開で行い、終了後に別々に取材に応じた。リニア開業後、静岡空港に東海道新幹線新駅を設置する県の構想についても話題に上ったとし、丹羽社長は「県の考えを受け止め、対話していこう」と伝えたと明らかにした。JRはこれまで一貫して静岡空港新駅設置に否定的な姿勢だったが、対応を軟化させた。鈴木知事は「長期的な課題で、まだ具体的な話ができる段階ではない。対話の場が持てればいい」と述べた。 リニアトンネル工事が進む岐阜県瑞浪市で住民の共同水源が枯渇した問題については、JR側の提案で、大井川流域の市町や利水団体でつくる大井川利水関係協議会に近く、対応状況を説明するとした。 静岡県は2019年9月、JRとの協議が必要な課題を47項目に取りまとめた。今年2月、国専門家会議の議論を経てトンネル工事中の突発湧水への対応や生態系への影響予測、残土置き場の環境対策など今後も議論が必要な課題を30項目に整理し、さらに28項目に絞り込んだ。 丹羽社長は「地域の皆さんの理解を得られるよう真摯に取り組む。鈴木知事とは緊密な関係を築きたい」と述べた。
静岡空港新駅、課題多く 実現は見通せず
JR東海の丹羽俊介社長は鈴木康友知事との初の面会で、これまで一貫して否定的だった静岡空港新駅の設置について、対応を軟化し、対話する姿勢を示した。リニア中央新幹線県内工事の着手に向けた議論の加速につなげたい考えだが、新駅設置の実現性は見通せない。 JRは空港新駅設置について「プラスの効果をもたらすことにはならない」と否定的な見解を示してきた。新駅と掛川駅の約15キロ距離が短いため、高速移動の効果を損なうことや、新幹線の停車回数の増加が見込みにくくなる点などを理由に挙げる。 空港利用者数や周辺開発の現状からも、新駅の必要性に疑問符が付く。JRによると、新型コロナウイルス禍前の2018年度の新幹線駅の1日平均乗降客数は、県内で最も少ない掛川駅でも8758人だった。一方、県によると、静岡空港の同年度1日平均搭乗者数は1956人にとどまる。 鈴木知事と丹羽社長は、空港新駅設置の可能性を引き続き検討することで一致した。7日にはリニア建設促進期成同盟会が、新駅設置を国土交通省やJRに初めて要望する方向で調整している。国や沿線自治体の後押しが今後、新駅実現にどう作用するか注目される。