大晦日にお正月…年末年始に注意すべき疾患を知っていますか? 【医師が予防法を伝授】
年末年始、こんな疾患が起こりやすい よく起こるものは?
編集部: 年末年始によく起こる疾病にはどんなものがありますか? 丸山先生: 年末年始は宴会や祝いの席が増えるので、「急性アルコール中毒」のリスクが高まります。若い人であっても、久しぶりに友人同士で集まった場面では昏睡状態になるほど飲酒して、救急車で搬送されるケースが多々あります。「酒は飲んでも飲まれるな」と言われるように、雰囲気に酔って飲みすぎないよう注意しましょう。 編集部: 外へ出かけることも増えると思いますが、外出時に気を付けることもありますか? 丸山先生: 外出時は感染症に注意です。特に、冬はインフルエンザや新型コロナウイルス感染症の流行が多くなります。そして、さまざまな地域から親族が一同に会する年末年始は、一気に感染が広がるリスクがあります。自分や子どもに発熱・咳など風邪症状がある場合は、人が集まる場へ行くのを控えるのが無難です。 編集部: 暴飲暴食や夜更かし以外にも注意すべきことはありますか? 丸山先生: 年末年始だけでなく、冬は室内での暖房器具の使用が増加します。特に石油ストーブ使用時に窓を閉め切って換気を怠ると、無色透明で無臭の一酸化炭素が室内に充満し、「一酸化炭素中毒」を引き起こすことがあります。一酸化炭素中毒の症状は頭痛、めまい、嘔気から始まり、重症の場合は意識を失って呼吸が止まってしまいます。そして、後遺症で認知症のようになってしまう症例も報告されています。 編集部: 「一酸化炭素中毒」にならないための解決策はありますか? 丸山先生: 外気が入ると寒くなるため不快かもしれませんが、囲炉裏や石油ストーブを使用する際は十分な換気を徹底しましょう。万が一体調不良を自覚した場合は、すぐに外で新鮮な空気を吸って病院を受診してください。一酸化炭素の血中濃度測定が必要になるので、総合病院の救急外来(救急科)への受診をおすすめします。 編集部: そのほか、なにか気を付けることはありますか? 丸山先生: 年末年始は毎年大掃除をされる方もいらっしゃいます。いつも掃除しない部分を不自然な姿勢で掃除したり、重い荷物を片付けたりすると、ぎっくり腰を引き起こす可能性があります。反対に、重いと思い込んでいた物が意外と軽かった時にも、ぎっくり腰になる可能性があります。ぎっくり腰の予防としては、正しい姿勢で荷物を持つことを心がけましょう。膝をしっかり曲げて腰を落とすようにしゃがみ、荷物を体に密着させて持ち、立ち上がってください。ぎっくり腰になってしまった場合は、絶対安静です。湿布を貼り、痛み止めを飲んでゆっくり療養しましょう。 編集部: ご高齢の方が気を付けるべき疾患はありますか? 丸山先生: お正月といえば“お餅”ですが、お餅は柔らかく粘り気があるため、喉に大変詰まりやすい食材です。餅が喉に詰まって気道が完全に塞がり、窒息で救急搬送されるケースが、年末年始になると非常に多くなります。 高齢のご家族や小さなお子さんにお餅を食べさせる際は、粘り気が弱く喉に詰まりにくいお餅を選ぶ、噛み切れるよう一口サイズにしたものを準備するといった対策が大切です。 編集部: ほかに高齢者の方が気を付けることはありますか? 丸山先生: 冬の時期はヒートショックのリスクも増えます。ヒートショックとは、急激な温度差によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかる現象のことをいいます。高齢者は、循環器系や自律神経系の機能低下により、血圧や心拍数の変動に適切に対応することができないため、ヒートショックを起こしやすい傾向があります。ヒートショックの症状は、軽度であればめまいや立ちくらみ程度で少し休むと回復しますが、重度になると心筋梗塞や脳卒中、溺水など、命にかかわる病気を発症します。 編集部: どうすればヒートショックを予防できますか? 丸山先生: ヒートショックを起こしやすい場面は入浴時です。入浴時のヒートショック対策としては、入浴前に脱衣所や浴室を暖める、湯温を41度以下にする、入浴時間を10分程度に制限することが推奨されます。また、浴槽からの立ち上がりは急な動作を避けるよう心掛け、食後や飲酒後、医薬品の服用後の入浴も避けましょう。そして、入浴の際は家族や同居者に声をかけておくことで、何かあった際の安全対策となります。