表現の自由を阻むロシアの「罵り言葉禁止法」の対抗策 ズビャギンツェフ監督
実在する捜索救助団体「リーザ・アラート」の活動
ーー失踪した息子・アレクセイの捜索をお願いしようにも、警察はまったく取り合ってくれません。そこで、2人は捜索救助団体「ヴェラ」に相談をします。とてもボランティアとは思えないほどの活躍ぶりでしたが、「ヴェラ」の活動は実在する組織をモデルにしたと聞きました。まず、どのようなきっかけで、その団体の活動に着目するようになり、『ラブレス』の中にも登場させ、重要な役割を与えようと思ったのでしょうか? ズビャギンツェフ監督:『エレナの惑い』(11)を撮ったとき、“離婚”というテーマに注目して、さまざまな情報を集めてきました。そのあとの『裁かれるは善人のみ』(14)では、ある夫婦のひとつの愛の形を描きました。その流れで「リーザ・アラート」という捜索救助隊があるのを知りました。この団体の活動内容を詳しくネットか何かで読みました。その中で行方不明の子どもの捜索について読んだとき、『ラブレス』の中では、夫婦の離婚と失踪した子どもを探す捜索隊の姿の2本柱をテーマにしようと考えつきました。もちろん中心的なテーマは夫婦の離婚なんですけれど、捜索隊の存在はこの映画をひじょうに充実させてくれたと思います。
リーザ・アラートについてもっと知りたいですか? じゃあ説明しますね。リーザ・アラートは2010年に設立され、今年で8年目に入ります。最初はモスクワだけにある小さな団体だったのですけれど、いまでは国内25の地域にあるんですね。非営利組織(NPO)のボランティア団体なのですが、人助けのために自分の時間を捧げている人たちです。子どもだけではなく、大人の行方不明者も探してくれます。2016年の1年間、ロシア全体で6150人の行方不明者がいて、そのうちの89%の人たちを生きている状態で、彼らが見つけたという実績があります。これは市民意識が覚醒した究極の形だと思います。国家の非常事態省などが、国民の安全に対する問題に無関心だということをクローズアップしています。 ◇ ◇ 隊列を組んで、森の中でアレクセイに呼びかけるボランティアの人々の声がいまも心に響いている。“ラブレス”の果てに、夫婦は何をみるのだろうか。 (取材・文・撮影:小杉聡子)
『ラブレス』 4月7日(土)、新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開 (C)2017 NON-STOP PRODUCTIONS ー WHY NOT PRODUCTIONS、配給:クロックワークス、アルバトロス・フィルム、STAR CHANNEL MOVIES