難化する男子難関中学受験の2024年入試を振り返る。エルカミノ代表に聞く来年の展望
東京都の高校無償化の影響も?
――慎重な受験校選びのせいか、今年は筑駒や聖光の難度が若干下がったとも聞きます。筑駒は繰り上げが増えたことも話題になりました。通学学区が広がったためで、千葉や神奈川の生徒が3日に「記念受験」をして合格したけれど、通学に時間がかかるからと、より家から近い開成や聖光に進学を決めて、辞退するケースが多かったと大手塾は分析していますが。 村上:そうですね。開成は人気がさらに高まっていますし、プラスして東京の高校無償化の影響もあるかもしれません。筑駒は国立で学費が安いのが魅力ですが、高校が無償化するなら開成に進学しても、経済的な負担は以前より減りますから。また、ごく一部ですが、灘に進学した受験生もいます。
伝統校は難関大学を目指す進学校として人気を確立
――開成の人気が高い一方、去年ぐらいから男子の伝統校全体が保護者からの評価を上げているようですが、いかがでしょうか。早稲田も人気ですが、巣鴨も今年は偏差値を上げました。巣鴨は先生の母校でもあります。 村上:伝統校、男子校も人気には差がありますね。伝統に寄りかからず、改革に前向きな男子校は保護者から支持されます。早稲田はもう「早稲田大学の系列校だから」という理由で入学させる保護者さんはほどんどいないのでは。東大などの難関国立大学を目指す進学校として人気を確立しています。 巣鴨は英語教育や医学部進学などの改革が注目されていますね。今年の2月1日、午後の巣鴨の算数一教科入試は激戦で、学校側が「申し訳なかった」とコメントをするほどでした。海城も相変わらず人気で、今年はチャレンジを回避するトレンドの中で受験生を少し減らしていますが(3日志願者が前年度比-2.6%)、難度は下がっていません。
入試問題を見るとその学校が見えてくる
――入試問題の中身はいかがでしょうか。去年は開成の問題が全体的に平易だったことが話題になりました。 村上:今年の開成は平易な問題と難しい問題の二極化でした。難しい問題はみな解けないし、平易な問題は反対にみな解けるので、今年の開成は算数で大きく差がつかなかったんです。結果的に平易な問題でミスがなかった生徒が合格していきました。去年のように全体的に平易な問題のほうが、最難関受験に関しては点差がつきます。 武蔵も思考力問題を中心にしつつ、比較的、平易な問題もバランスよく出題されています。これは麻布や栄光も同じ傾向です。基礎学力の上に思考力がないと解けない問題を出していて、洗練されています。海城もあのクオリティの高い入試問題を2回分作成するのだから、入学後も質の高い指導だろうと期待できますよね。 保護者の方におすすめしたいのは、まずその学校の入試問題を見ることです。その学校の中身がよくわかってきます。 ――城北や本郷といった人気の上位校はどうでしょうか。 村上:城北も本郷も面倒見がよい学校です。城北はもっと難易度が高くてもいいぐらいなので、穴場ともいえる学校ですし、本郷は開成の併願校として受験する生徒も多いですね。 これらの学校の学校を第一志望にして、1日に受験するならば、最難関校に比べると算数で差がつきにくいので、理科や社会を重点的に勉強することも効果的です。特に直前期に、暗記に集中するのはありだと思いますよ。