<社会インフラを行く!>水害から都市を守るゲートキーパー「岩淵水門」
東京はその昔から大きな河川に囲まれた地形で、深刻な水害に悩まされてきた。東京都北区、荒川放水路と隅田川を分ける場所に位置する岩淵水門は、東京下町をはじめとした下流域を水害から守るゲートキーパーである。
地下鉄南北線赤羽岩淵駅から徒歩約15分。青い水門と赤い水門の2つが見える。それぞれ「青水門」「赤水門」と呼ばれて親しまれてきた。1924年(大正13年)に完成した「赤水門」は、老朽化や地盤沈下のため1982年(昭和57年)、「青水門」にその役割を譲り渡した。 幅員9メートルのゲート5門を有する「赤水門」は、洪水から都市を守るという役割を終えたものの、土木構造物としての価値は高く、1999年に東京都の歴史建造物に指定されている。設計者は、パナマ運河建設に携わった青山士(あきら)である。
赤水門から下流方向に位置する「青水門」は、幅員10メートルのゲートが3門。大雨が降ったときにゲートを閉鎖、隅田川に流れる水をブロックすることで流下能力が高い荒川放水路へと水を導くことで都市を水害から守る。 2011年3月11日の東日本大震災では、岩淵水門で60センチメートルの津波を観測した。津波から都市を守ることもこの水門の役割である。「青水門」には、自家発電設備があり、電源のバックアップを確保しているが、電源喪失に備えて、ゲートの自重降下機能も併せ持ち、万が一に備えている。 両水門近くには、両水門近くには、国土交通省荒川下流事務所が運営する荒川知水資料館AMOAがあるが、数々の展示を通じて、荒川の治水対策を学ぶことができる。 (監修:吉川弘道・東京都市大学教授(http://www.doboku-watching.com/))