【パリオリンピック男子体操】橋本大輝が苦闘の末にたどり着いた新境地 20歳の岡慎之助がつないだ個人総合日本勢五輪4連覇の意味
【「結果はいらない。思い切ってやっていいですか?」】 個人総合予選のあと、29日の団体戦前のミーティングで、橋本はほかの選手に「苦しかった」という胸の内を明かした。「萱和磨さんが(東京五輪で銀メダルとなった)悔しい思いを持って戦っていることを聞いて、苦しかったり悔しかったりしているのは、自分だけではないと思ったので、すべてを話してスッキリしてから団体決勝を戦いたいと思った」という。 その団体戦は目標にしていた金メダル獲得は果たしたが、4種目出場の橋本は、本来の力を発揮することはできなかった。 個人総合決勝を迎え、「6種目できるかどうかが一番不安だった」という橋本は、最初のゆかは丁寧な演技を貫いて全体3位となる14.333点の演技でガッツポーズも出た。だが次のあん馬では把手を両手で持つ倒立に入るところでバランスを崩して落下。12.966点の低得点に終わった。 「予選と団体を終えた疲労感はあったが、5月にケガをしてからは一番体の状態もよくて、ゆかをスタートした時は『アッ、すごい、今日は動けるんだ』と思いました。今日は本当に動きも良くて、久しぶりに心の底から自分の体をコントロールできている幸福感もありました」 それでも優勝候補のひとりである張が最初のゆかでミスをして13.238点に止まっていたことを考えれば、まだ挽回のチャンスはあると思えた。だがそのあとのつり輪では演技要素が認められない取りこぼしがあり、Dスコアも想定を下回り全体14位の13.400点。優勝はさらに遠ざかった。 次の跳馬では着地もほぼ決め、全体3位の14.733点を出すと笑顔も出た。さらにそのあとの平行棒の直前の練習後には、客席からの声援に向けて手を振り返す姿も見せた。 「つり輪が終わってから、斉藤良宏先生や中島啓トレーナーに『もう結果はいらないので思いきってやってきていいですか』と話し、『思いきりやってこい』という言葉をもらったからこそ、気持ちを切り替えて最後まで戦えたと思います」 Dスコアを6.3点から6.1点に抑えた平行棒は着地で大きく前に一歩跳んだが、14.433点。そして今大会最後の演技となる鉄棒は、着地をしっかり決めて14.400点。合計を84.598点にし、つり輪が終わった段階では全体18位だった順位を6位まで上げた。 「目標にしていたものとは全然違うし、東京(五輪)が終わってから3年間は想定外のこともあった。思い描いていた立ち位置とはぜんぜん違うけど、まだまだ挑戦できる自分がいる。自分が4年後にどうなっているかわからないけど、また新しい自分を作り出せるようにしていきたいです」