【解説】トランプ2.0に揺れるアジア新興国、東南アジアとインドの対応、日本の役割とは?
日本には果たせる役割がある
このようにトランプ氏のカムバックは東南アジアとインドにさまざまな影響を与えることになるが、それに対して日本はどのように臨むべきだろうか。米国は日本にとって最重要のパートナーであるが、東南アジアとインドも経済ビジネスや対中戦略において極めて重要な地域である。日本とこれらの国々のパートナーシップは、日米両国が一緒になってこれらの国々との関係を発展させることでより強固になる。したがって米国のアジア地域への関与を維持させることは日本にとっても非常に重要であり、アジア新興国、特に東南アジアがトランプ2.0によって中国への傾斜を深める恐れがある中で、日本が果たし得る役割は大きい。 東南アジアは中国との貿易・投資を拡大することで利益を得ているが、中国製品の流入や資源やインフラ等の分野における自国の利益に極端に偏重した投資の手法には抵抗を感じている。インドも中国からの輸入に大きく依存しているが、投資についてはデジタル分野を中心に厳しい規制をかけ、国内生産能力を高めることで中国への依存を縮小しようとしている。これらの領域において、日本は中国にはない強みを発揮することが期待できる。 脱炭素についても、東南アジアとインドは積極的に推進しており、近年はマレーシア、タイ、ベトナムなどはその取り組みが評価され、グローバルなIT企業からのデータセンター投資を促進させている。トランプ2.0において米国の脱炭素政策は後退する可能性が高いが、ここにおいても日本は独自の貢献を果たす余地が大きくなると考えられる。日本はクアッドやアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)といった多国間の枠組みも推進しているが、その役割もさらに大きくなるだろう。トランプ2.0の時代において、日本はその期待と責任がさらに高まるとの認識に立ち、東南アジアとインドとの関係強化の機会を一層見出すことが望まれる。
石井順也