地球以外に存在するのか…「地球外生命」への大きすぎた期待と、じつに意外だった「ヴァイキング探査の結果」
生命がの存在を調べる「ヴァイキング生物学実験」
生命がいるかどうかを調べる「ヴァイキング生物学実験」は、3つの実験から構成されていました(図「ヴァイキング生物学実験」)。 まずは「熱分解放出実験」。火星の土壌に水と二酸化炭素を加え、光を当てたあとに土壌中で有機物がつくられるかどうかを調べる実験です。もし地球の光合成生物(シアノバクテリアなど)のようなものがいれば、土壌を加熱したときに二酸化炭素が発生するはずです。 2番目は「ラベル放出実験」。こちらは有機物を「食べる」生物がいるかどうかをみる実験です。アミノ酸などの有機物を与えたときに、これを分解してガスを出すかどうかをみます。 3番目は「ガス交換実験」。私たちは生きていくのに酸素を用い、二酸化炭素を吐き出します。このようなガス交換が行われているかどうかをみるものです。
実験の結果、生命の痕跡は見つかったか
3つの実験の結果、火星土壌から何も発生しなかったわけではなかったのですが、結論としては、生命が存在する証拠となるものはありませんでした。 たとえば、ラベル放出実験では有機物を加えると二酸化炭素が発生しましたので、有機物を分解するものが存在するとはいえます。 しかし、2度目に有機物を加えたときは、二酸化炭素はほとんど出てきませんでした。このことから、生物ではない別のものが有機物を分解していると解釈されました。 さらに困ったのは、火星土壌中に有機物が検出されなかったことです。生命が存在しないと考えられる隕石(炭素質コンドライト)中にも有機物はあるし、星間の分子雲にも有機物が検出されているくらいですから、火星でも、生命が検出されるかどうかはともかく、有機物は検出されるだろうとヴァイキング計画の前は考えられていました。 こうしたことから、一般の人々の火星への関心はしぼんでしまい、さらには火星探査自体も、なかなか立案できない状況になってしまいました。 ところが、1996年8月7日、その後の火星探査のみならず、地球外生命研究の方向をも一変させる発表が、NASAのダニエル・ゴールディン長官によって行われ、日本でも多くの新聞やテレビがトップニュースとして報じられました。それは米国の研究チームが、火星から飛来した「ALH84001」とよばれる隕石中に、生命の痕跡を発見した、というものでした。 ---------- 生命と非生命のあいだ 地球で「奇跡」は起きたのか ----------
小林 憲正