湯田薫を紹介する若おかみの宮川さん（西の雅常盤で）

　山口市湯田温泉には全国の温泉地をモチーフとした美少女キャラクター「温泉むすめ」の一人、湯田薫がいる。2018年に誕生し、全国からファンが訪れるが、地元ではほぼ無名。有効に活用すれば、市の新たな魅力発信につながるという声も上がっている。 　温泉むすめは、各温泉地の文化を擬人化し、プロの声優が声を務めているのが特徴。キャラクターを通じて温泉地の魅力を発信し、地域活性化に一役買っている。イベント企画などを手掛ける「エンバウンド」（東京）が、11年の東日本大震災を機に東北をはじめ地方の観光を再興し、元気づけたいとの思いで17年から始めた。 　利用は、ライセンス費用などすべて無料。有馬温泉（兵庫県神戸市）では温泉大使、島根県松江市では観光大使を務めている。インターネット上のグッズ販売を禁止し、現地でも1事業者が1商品のみ販売する制限を設け、ファンの温泉地の回遊を後押し。声優による現地ロケや温泉地間で連携したイベントに多くのファンが集まるという。 　湯田薫は白狐をモチーフとしたみこのようなキャラクター。声は人気声優の指出毬亜（さしで・まりあ）さんが担当。市内では湯田温泉4丁目の旅館「西の雅常盤」が唯一、活用している。22年9月からグッズを販売し、指出さんのサインが入ったパネルを設置。グッズは入荷するとすぐ売り切れる人気ぶり。各地の温泉むすめグッズを置いていく〝奉納〟の風習があり、全国のファンから寄せられた缶バッジやキーホルダーが飾られている。 　若おかみの宮川好世さんは「全国からの問い合わせも多い。せっかくかわいいキャラクターなので設定を含めて多くの人に楽しんでほしい」とさらなるPRを期待する。 　温泉むすめをめぐっては、市議会6月定例会の一般質問で野村雄太郎議員（やまぐち有隣会）が「積極的に扱われておらず、もったいない」と今後の活用について聞いた。温泉むすめは全国約130カ所にだけ設定され、新たな制作には時間がかかるため、市に優位性があることや日本のアニメブームから訪日外国人客を取り込めると指摘。岡村萬利雄交流創造部長は「温泉地間の連携に期待できる」としつつ「既存キャラクターの湯田ゆう子、ゆう太との区別が必要。各観光団体と相談し、活用を検討したい」と述べた。 　湯田温泉には漫画「文豪ストレイドッグス」とコラボして来場者が増加した中原中也記念館と漫画「ざつ旅」に登場し、客が増えたばりそば店「春来館」もある。決して侮れない2次元コンテンツ。湯田薫の今後の活躍に期待が寄せられている。