大雪での派遣要請されず 自衛隊の災害派遣の基準は?
大きな災害が起きた際、自衛隊が派遣されるシーンをテレビなどで目にすることがあります。今回の記録的な大雪でも、山梨県の広い範囲で孤立状態になるなど、積雪による被害が拡大し、各都県からの自衛隊の災害派遣要請が相次ぎました。ただ埼玉県は当初、秩父市からの自衛隊出動の求めを「除雪のための要請はできない」として断っていたと報じられました。自衛隊の災害派遣には、どのような基準があるのでしょうか。
都道府県知事の要請が必要
大災害が起こった場合の自衛隊派遣は、原則として、都道府県知事からの要請を受けて行われます。知事は、市町村からの派遣要求を受け、地方自治体の災害対応能力を超えると判断した場合に要請します。今回の埼玉のケースでいうと、秩父市が要求しても、埼玉県が必要と判断しなければ要請はされないことになります。 埼玉県消防防災課によると、今回の判断について「災害対応は第一義的には県や関係機関などの行政機関で行うべきで、自衛隊派遣は切り札的なもの。当初から自衛隊などと協議を続けていたが、秩父市から要求を受けた時点では、まだ県などで対応すべき段階だと判断した。それから、薬が足りなくなるなど地元のひっ迫した状況が明らかになり、生命への危険性が予測された段階で、自衛隊派遣を要請した」としています。 要請を受けた自衛隊は「災害派遣の3つの原則」が満たされていれば防衛大臣の命によって派遣されます。
災害派遣には「3つの原則」
自衛隊の災害派遣には、この3つの原則を満たしていることが必要です。一つ目は「公共性」で、人命や財産を守る必要性がある場合、ニつ目は「緊急性」で、さし迫った状況である場合、三つ目は「非代替性」で、自衛隊以外に適切な手段がない場合、です。「非代替性」とは、自衛隊が持つ装備や技術でないと対応できないようなケースですが、場合によっては民業を圧迫すると指摘されることもあるようです。 知事からの要請を待つ猶予がない緊急の場合には、防衛大臣の判断で「自主派遣」することもあります。東日本大震災の際に、岩手県・山田分屯基地の空自が震災後ただちに出動した例などがあります。
2006年の豪雪でも派遣例
災害派遣の対象は、豪雨や豪雪、地震などの自然災害のほか、原子力災害などにも対応します。ただ雪によるものは珍しく、過去の例では2006年の豪雪の際、北海道や秋田県、福島県などに派遣され、孤立世帯や高齢者世帯のための除雪などを行いました。 自衛隊では阪神大震災での経験から、災害派遣に即動できるよう、初動対処の待機態勢を常にとっています。防衛省は「災害派遣活動を円滑に行うためには、地方公共団体との連携強化が重要。連絡体制の充実や災害対策マニュアルの策定などを進めている」と話しています。